4話:想う気持ち

軽くシャワーを浴びて、着替えをすませてから翔太の部屋をノックする。

「来たで」

髪乾かすんは面倒やから、首にタオル掛けたまま部屋の扉開けて覗き込めば、翔太と尚が同時にこちらを向いた。

真優とはちゃうけど明るめの茶色い瞳に俺が映っている。
尚は立ち上がると、俺を真っ直ぐ見て頭を下げた。

「初めまして、小鳥遊尚いいます。あの、姉ちゃん……真優の弟で――」
「知っとるよ。自分と会うたんは初めてやけど存在は知っとる。謙也や。翔太の兄貴の」

俺は端的に告げると、尚をもう一度座らせた。
翔太は「ほんなら、俺席外すなー」と、尚と俺の肩を軽く叩いて部屋を出て行った。

――あいつ、マジか。

俺は思わず目で翔太を追う。
初対面同士を残していく奴があるかと思ったけど……。

まあ、翔太なりに気をきかせたつもりなんやろ。
あいつ、不器用やからな。
多分、俺んこと信じてってのと――尚の背中押したつもりなんやろうけど。

ため息交じりに閉まる扉を見つめてから、目の前の尚に視線を戻せば、同じような顔しとって少し笑ってしもた。

「あいつマジかって思うてるやろ」
「え、あ……はい。思うてます」
「俺も思てる」

照れ笑いのような呆れを浮かべる尚をまじまじと見る。

背は真優より高い。
やけど、身体つきはやっぱまだ中一って感じで、ひょろ長くて。
肌はすっかり焦げて、ザ・サッカー少年って感じ。

ただ、やっぱり真優の弟やからか、面持ちは似とって。
多分、日に焼けてへんかったら、真優と同じくらい白いんちゃうかな、なんて思ったり。

俺は尚の正面に座ると「翔太に、俺に話あるって聞いたけど」と切り出した。
尚は「はい」と首肯すると、姿勢を正して座り直す。
大きく息を吸う。その小さな肩がわずかに震えて見えた。

「帰ったばっかやのに、時間取ってくれてありがとうございます」
「かまへんよ」
「ほんまは、こんなん謙也くんに頼むのなんておかしな話なんかもしれへんのですけど……」

尚はそこまで言うと、膝の上で握った拳を爪が食い込むくらい力いっぱいに握りしめた。
きっとものすごい緊張しとる。

「姉ちゃんの、ことで。話があって」

その言葉に、胸の奥がちり、と熱を帯びた。

ああ、やっぱり。

それが俺の感想。
それ以外に思いつかへんっていうのもある。

真優とあのおかん。
それをいつも見とるこいつなりになんか思うことがあって、俺のとこ来たんやろ?
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