3話:同じ空の下

うちと青学の試合で会場設備に不具合が生じたせいで、本来準決勝の翌日に予定されていた決勝が、三日後に延期された。

ほんまやったら、負けたらすぐ帰るはずやってんけど。
オサムちゃんの「決勝見て帰ろや」という鶴の一声で、結局全国大会最終日まで東京に居座とった。

結果は青学の優勝。
過去、全国二連覇を成し遂げとった立海大附属の牙城を崩す歴史的な試合となった。

ま、うちに勝った学校が優勝してくれたんやから、良しとしよか。

そんなことを考えながら、ようやく大阪に帰ってきたのは、真優のコンクール三日前の夕方やった。
どうにか、本番までにネックレス返しに行けそうでよかったわ。

「ただいまぁ」

久しぶりの自宅の戸を開け、俺は気の抜けた声で言った。
なんだかんだくたくたや。さっさと風呂入って飯食うて寝たい。

「お! 兄ちゃんおかえり」

二階から軽やかな足取りで翔太が顔をのぞかせた。

「おー、ただいま」

翔太はそのまま、玄関まで来ると「お疲れさんやったな」と続けた。

「準決勝で負けた聞いたときは悔しい思たけど、なんだかんだ兄ちゃんら全国ベスト4やろ? すごいやん」
「おおきにな。まあ、優勝狙とったから悔しいわ」
「まあ、悔しいと思うけど……。それでもすごいで」

俺からはおめでとうって言うとくな! と、付け足され、やれやれと息を吐いた。

――翔太にまで励まされとる。

わざわざそれ言うためだけに降りてきたんやったら、可愛ええんやけど。
こいつ、土産の催促とかしに来たんちゃうか。
心の奥の方で現金な弟に警戒しながら、俺は靴を脱ぐ。

「兄ちゃん」

俺の背中に翔太の声が掛かった。
やっぱ土産か!? なんて考えとったら、次に出た翔太の言葉は、全く予想もしとらんもんやった。


「尚が、来とる」


心臓が一拍、大きく跳ねた。
俺は思わず目を見開いて「尚ってあの尚?」と聞き返す。
弟は頷くと神妙な面持ちで口を開いた。

「兄ちゃんに話あるんやって。準備終わったらでええから俺の部屋来てくれん?」
「……分かった」

尚――小鳥遊尚。
真優の弟で翔太の友人。

そいつが俺に話あるってなんなんや? 
まあ、思い当たる節なんて一つしかないけど……。

俺はふぅっと大きめのため息を吐くと、荷物を引きずるようにして自室へ向かった。
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