11話:白昼カデンツァ
真剣な横顔、眼差し――。
ピアノの前で一呼吸。
ピアノは真優が鍵盤に触れるのを、今か、今かと待っている。
小さく息を吸い込む音が聞こえて、曲が始まった。
ピアノが息を吹き返す。
まだ、詰め切れてへんところもあるけど。
どうして、真優の音ってこんなあたたかいんやろうな。
春、聴いたときとは明らかに違う音のあたたかさに、俺は頬杖をついて目を閉じた。
――この時間がずっと続けばええのに。
流れる旋律に聴き入る。
たった一音に、喜びや悲しみが乗る。
特段派手かと言われればそんなことはないのに、華があって胸に染みる。
音が音でいられるのは一瞬なのに、消えずにいつまでも胸に残って。気が付けば、胸の内はあたたかいもので満たされていた。
まるで、真優を独り占めしとるみたいな気持ちになって。
「……やっぱ、好きやなぁ」
ハッと息を飲む。
まぶたを跳ね上げて、そっと真優を覗き見る。
真優の視線は相変わらずピアノに向けられて、時折物語を紡ぐみたいにまぶたを伏せて――。
やば……今の聞こえてへんやろな?
早鐘みたいに鳴っとる心臓、どうにか落ち着かせようと、ゆっくり息を吸い込んだ。
変わらず旋律を生み出す指先に、ほっと息を吐いたと同時に、ほんの一瞬。
音が揺れた気がして、胸がきゅっと縮む。
……勘違いやろか。
それでも、と再び心臓が高鳴った。
音楽室いっぱいに広がるあたたかな旋律が、不安を柔らげるように響き続けていた。
ピアノの前で一呼吸。
ピアノは真優が鍵盤に触れるのを、今か、今かと待っている。
小さく息を吸い込む音が聞こえて、曲が始まった。
ピアノが息を吹き返す。
まだ、詰め切れてへんところもあるけど。
どうして、真優の音ってこんなあたたかいんやろうな。
春、聴いたときとは明らかに違う音のあたたかさに、俺は頬杖をついて目を閉じた。
――この時間がずっと続けばええのに。
流れる旋律に聴き入る。
たった一音に、喜びや悲しみが乗る。
特段派手かと言われればそんなことはないのに、華があって胸に染みる。
音が音でいられるのは一瞬なのに、消えずにいつまでも胸に残って。気が付けば、胸の内はあたたかいもので満たされていた。
まるで、真優を独り占めしとるみたいな気持ちになって。
「……やっぱ、好きやなぁ」
ハッと息を飲む。
まぶたを跳ね上げて、そっと真優を覗き見る。
真優の視線は相変わらずピアノに向けられて、時折物語を紡ぐみたいにまぶたを伏せて――。
やば……今の聞こえてへんやろな?
早鐘みたいに鳴っとる心臓、どうにか落ち着かせようと、ゆっくり息を吸い込んだ。
変わらず旋律を生み出す指先に、ほっと息を吐いたと同時に、ほんの一瞬。
音が揺れた気がして、胸がきゅっと縮む。
……勘違いやろか。
それでも、と再び心臓が高鳴った。
音楽室いっぱいに広がるあたたかな旋律が、不安を柔らげるように響き続けていた。