11話:白昼カデンツァ
昼休み――話し声に、笑い声。
ざわざわ騒がしい校内に今日もピアノの音が響く。
――またや。
このところ、毎日昼休みになると真優は片手で食べられるもんをさっと口に放り込んで、すぐに教室を出ていく。
少しすると、ピアノの音が流れ出す。
「真優ちゃん、また弾いとるね」
クラスメイトの何気ない声に、女子らが憧れ混じりに盛り上がる。
「ピアニストって格好ええよなぁ」
「お昼に生演奏とか、ほんま贅沢」
「本番の裏側、特別に見せてもろてるみたいで」
無邪気な声。
けど俺には、そんな優雅で甘いもんやないと感じられる。
毎日、毎日。
急き立てられるように紡がれる音。
一音、一音に熱が宿り、疾風のように鍵盤を駆け抜ける旋律。
まるで、見えない何かと戦うように、抜け出したいと叫ぶように響く。
きらびやかな舞台の裏で、積み重ねられた努力。
ひたむきに曲と向き合い続ける姿。
複雑な家庭環境をひた隠しにする精神力。
初めて真優の演奏を聴いたとき感じた、痛みの正体。
その正体の一端を知っとるのは、この学校ではきっと俺だけ。
他の奴らは、ただ『ええ音やな』と耳を傾けとる。
やから、真優の秘密がバレんように。
少しでも、助けになれるように。
俺は音楽室へ足を向けていた。
ざわざわ騒がしい校内に今日もピアノの音が響く。
――またや。
このところ、毎日昼休みになると真優は片手で食べられるもんをさっと口に放り込んで、すぐに教室を出ていく。
少しすると、ピアノの音が流れ出す。
「真優ちゃん、また弾いとるね」
クラスメイトの何気ない声に、女子らが憧れ混じりに盛り上がる。
「ピアニストって格好ええよなぁ」
「お昼に生演奏とか、ほんま贅沢」
「本番の裏側、特別に見せてもろてるみたいで」
無邪気な声。
けど俺には、そんな優雅で甘いもんやないと感じられる。
毎日、毎日。
急き立てられるように紡がれる音。
一音、一音に熱が宿り、疾風のように鍵盤を駆け抜ける旋律。
まるで、見えない何かと戦うように、抜け出したいと叫ぶように響く。
きらびやかな舞台の裏で、積み重ねられた努力。
ひたむきに曲と向き合い続ける姿。
複雑な家庭環境をひた隠しにする精神力。
初めて真優の演奏を聴いたとき感じた、痛みの正体。
その正体の一端を知っとるのは、この学校ではきっと俺だけ。
他の奴らは、ただ『ええ音やな』と耳を傾けとる。
やから、真優の秘密がバレんように。
少しでも、助けになれるように。
俺は音楽室へ足を向けていた。