5話:風に散る願い

晴れ渡る五月の空に、爽やかな風が気持ちいい。
前にテニス部の見学をさせてもらってから、少し日が開いてしまった。

あのあと、いろいろな事を考えた。

学校のこと、家族のこと、ピアノのこと。
それから――私自身のこと。

ほんまは自分一人でなんとか出来たらええんやけど、現実はそんなに甘くなくて。

私はピアニストだけど、まだ中学生で社会的立場は弱いから。
親に頼らざるを得へんとこもあって。

今までたくさんの先生にピアノを習ってきた。
尊敬できる先生たちが口を揃えて言っていたのは『人柄は音に出る』ということ。

このままだと、多分私はおかしな人間になってしまう。

――人の見てくれをした、自分のない生き物。

そんなの、嫌やと思った。

いつか先生が言ってくれた言葉を思い出す。

「あなたの優しさは武器になる」
「だから決して無くさないで」

正直、私が優しいかは分からない。
でも、私の武器がすり減ってなくなっていくのは嫌だ。

そのためにも、私は今日入部届を出す。
参加できない日もあると伝えたにもかかわらず、快く迎え入れてくれた彼らと共に歩みたいと思った。

そして、少しでも深い繋がりを持ちたい――。

髪が五月風にそよぐ。
私は髪の毛を押さえるとゆるりと空を見上げた。
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