4話:I know…
昨日、小春ちゃんに教えてもらった通りに、ボールを拾い、ドリンクを作る。
一氏くんに「お前、球出しとかできるんか?」と凄まれてやってみたけど、自分でも引くほど下手糞やったからやめといた。
なんなら、あの一氏くんが「なんや……すまんかったな」と謝ってくるレベル。
――穴があったら入りたい。
ウォームアップを終えた小春ちゃんにドリンクを渡せば「真優ちゃん、おおきにぃ」とほほ笑まれた。
「へっぴり腰で可愛かったでぇ」
悔しいことに言い返せない。
私はうぐっと呻くと「恥ずかしわ」と顔を両手で覆った。
それから、はたっと先の白石くんの言葉を思い出し「なあ、小春ちゃん」と続ける。
「一氏くんとペア解消しそうになってたん?」
我ながらひねりのない質問だと思う。
こんな聞き方で答えてくれるかは分からないけど。
そう思いながら、小春ちゃんを覗き込んだ。
小春ちゃんは私の視線に、にんまりといい笑顔を向け、内緒話をするように口を開く。
「どこで、そんなん聞いたんか知らんけどぉ」
「それは、ほ・ん・ま」
いい笑顔のまま小春ちゃんは耳打ちする。
私は思わず「ええ!? だ、大丈夫なん? それ」と、声を上げてしまった。
小春ちゃんは「大丈夫よぉ」と続ける。
「真優ちゃん昨日来てくれたやろ?」
「う、うん」
「ほんで、ユウくんがかなりきつい当たりをしたやない?」
「……まあ」
「それで、ウチが『女の子にきつい当たりをする男とはもう組まへん!』って言うてな」
「ああ、そういう……」
「やから、ペア続けたいなら今日もう一度真優ちゃん連れてきいって」
「ははあ、なるほど」
多分、小春ちゃんと一氏くんのダブルスはテニス部の中でも息ぴったりで強いんやと思う。
だからこそ、小春ちゃんが「ペア解消」と言い出して、部長の白石くんは焦ったんちゃうかな。
――ほんで、あんな必死やったん。
「難儀やなぁ」
やれやれと笑えば、途端に小春ちゃんが抱き着いてきた。
「へっ!?」
「んもう! そんなこと気にするなんて可愛いんやから」
固まる私に小春ちゃんは頬ずりをする。
なんやろう、嫌ではない。
嫌ではないんやけど……。
一応、生物学的に小春ちゃんは男の子なわけで。
完全にフリーズしていると、不意に私から小春ちゃんが引きはがされた。
これはまた一氏くんに恫喝されるな、と覚悟したけど、頭上から降ってきた声は一氏くんのものではなくて。
「あかん。いくら小春と言えど、あかん」
謙也くんが私の肩を抱えるように腕を回し、小春ちゃんをぐっと押し離していた。
背中に謙也くんの体温を感じて、私の身体が熱を持つ。
「やーん! 謙也くん、嫉妬?」
「ちゃうわ!」
両頬に手を当て、小春ちゃんがきゃーきゃー見ている。
私はしどろもどろに謙也くんを見上げると、喉の奥が張り付いたような声で告げた。
「も、もう……大、丈夫、やで……」
謙也くんは、ほんまか? と言いたげに眉を寄せ私を見下ろす。
それから固まって――ゆでだこみたいに真っ赤になった。
「す、すまん! なんや、部のいつものノリで……っ!」
謙也くんはパッと私から離れ、恥ずかしそうに顔を両手で覆った。
――やっぱテニス部の子らって距離感バグってるわ。
私は頬を染めたまま、ふはっと吹き出す。
「ええよ、ええよ。ありがとうな」
一氏くんに「お前、球出しとかできるんか?」と凄まれてやってみたけど、自分でも引くほど下手糞やったからやめといた。
なんなら、あの一氏くんが「なんや……すまんかったな」と謝ってくるレベル。
――穴があったら入りたい。
ウォームアップを終えた小春ちゃんにドリンクを渡せば「真優ちゃん、おおきにぃ」とほほ笑まれた。
「へっぴり腰で可愛かったでぇ」
悔しいことに言い返せない。
私はうぐっと呻くと「恥ずかしわ」と顔を両手で覆った。
それから、はたっと先の白石くんの言葉を思い出し「なあ、小春ちゃん」と続ける。
「一氏くんとペア解消しそうになってたん?」
我ながらひねりのない質問だと思う。
こんな聞き方で答えてくれるかは分からないけど。
そう思いながら、小春ちゃんを覗き込んだ。
小春ちゃんは私の視線に、にんまりといい笑顔を向け、内緒話をするように口を開く。
「どこで、そんなん聞いたんか知らんけどぉ」
「それは、ほ・ん・ま」
いい笑顔のまま小春ちゃんは耳打ちする。
私は思わず「ええ!? だ、大丈夫なん? それ」と、声を上げてしまった。
小春ちゃんは「大丈夫よぉ」と続ける。
「真優ちゃん昨日来てくれたやろ?」
「う、うん」
「ほんで、ユウくんがかなりきつい当たりをしたやない?」
「……まあ」
「それで、ウチが『女の子にきつい当たりをする男とはもう組まへん!』って言うてな」
「ああ、そういう……」
「やから、ペア続けたいなら今日もう一度真優ちゃん連れてきいって」
「ははあ、なるほど」
多分、小春ちゃんと一氏くんのダブルスはテニス部の中でも息ぴったりで強いんやと思う。
だからこそ、小春ちゃんが「ペア解消」と言い出して、部長の白石くんは焦ったんちゃうかな。
――ほんで、あんな必死やったん。
「難儀やなぁ」
やれやれと笑えば、途端に小春ちゃんが抱き着いてきた。
「へっ!?」
「んもう! そんなこと気にするなんて可愛いんやから」
固まる私に小春ちゃんは頬ずりをする。
なんやろう、嫌ではない。
嫌ではないんやけど……。
一応、生物学的に小春ちゃんは男の子なわけで。
完全にフリーズしていると、不意に私から小春ちゃんが引きはがされた。
これはまた一氏くんに恫喝されるな、と覚悟したけど、頭上から降ってきた声は一氏くんのものではなくて。
「あかん。いくら小春と言えど、あかん」
謙也くんが私の肩を抱えるように腕を回し、小春ちゃんをぐっと押し離していた。
背中に謙也くんの体温を感じて、私の身体が熱を持つ。
「やーん! 謙也くん、嫉妬?」
「ちゃうわ!」
両頬に手を当て、小春ちゃんがきゃーきゃー見ている。
私はしどろもどろに謙也くんを見上げると、喉の奥が張り付いたような声で告げた。
「も、もう……大、丈夫、やで……」
謙也くんは、ほんまか? と言いたげに眉を寄せ私を見下ろす。
それから固まって――ゆでだこみたいに真っ赤になった。
「す、すまん! なんや、部のいつものノリで……っ!」
謙也くんはパッと私から離れ、恥ずかしそうに顔を両手で覆った。
――やっぱテニス部の子らって距離感バグってるわ。
私は頬を染めたまま、ふはっと吹き出す。
「ええよ、ええよ。ありがとうな」