みじかいの


「ちょ、カトル待っ、やだ」
「はいはい、黙って下さいね」
 拒絶を主張するグランの唇を、カトルは自分の唇で塞ぐ。一瞬の動揺の隙を突くのはカトルが最も得意とすることだ。唇が閉じられる前に、少しでも舌先を侵入させれば、後はカトルのペースだった。
 そこから侵食していくように、カトルはグランの口内を堪能した。
「んっ、んぅ……ふ、は……ァ、んんっ……」
 酸素を求める合間に漏れる声は、もう十分な色を孕んでいる。なら先に進んでも、という判断は、いつだって本能任せだ。

(何でこんなにエロいんだよいちいちコイツは……!)

 その生い立ちから、成熟することを強いられ、選んだとて、カトルもまだ年若い青年なのだ。
 自らの手で乱した特別な存在からの自覚なき誘惑に、抗う術などあるはずもない。

 唇同士のキスをやめるのも名残惜しいが、後でいくらでもすればいい。そのまま頬に、首筋に、鎖骨に、と唇を滑らせていく。
「や、ぁ、カトルっ……」
「何が嫌なんです? もう貴方もスイッチ入ってるじゃないですか」
 も、と言った通り、兆しを見せる股間をグランのそこにぐりぐりと擦り付ける。わかりやすい刺激に互いのモノが互いに昂るのが嫌でもわかってしまう。
「や、だ、それっ……」
「ッ……悪くないですね、これ。このまま一回出しますか?」
「やっ……」
「じゃあどうします? こっちにしますか?」
 そう言ってカトルが触れたのはグランの胸の突起だった。指先で引っ掻くようにしていると、自然と頭を出したそこをぺろりと舐め上げ、吸い付いた。ぷっくりと勃ち上がった小さな粒を捏ねるように舌先で弄ぶ。
「ひ、ぁっ、や、だっ、そこ、やめっ……!」
「ん……全く、さっきからそればかりですね」
 カトルは呆れたように言い捨てつつも、乳首への愛撫をやめることはなかった。
「ここ、気持ちよくないですか?」
 そう聞けば、グランはきゅっと目を瞑りながらも、首を横に振っている。
「……そういうところ、本当に可愛いですよね、グランさん」
「かわ……違っ……!」
 これについてはカトルの主観だが、グランの否定や拒絶がそうではないことをカトルは知っている。
 他人からの回りくどい言動は好まないが、グランのこういう姿はいじらしいと言うか彼らしいと言うか──それを可愛いなどと思ってしまうのも、惚れたが故の欲目といったところなのだろうか。


「……さて、どうしますか? 本当に嫌ならここでやめますか?」
 泣いて暴れてもやめる気はないけれど、と言う含みも込めて、カトルは組み強いたグランに敢えて問う──互いに答えはわかっているのだ。

「……やめないで」
 

 
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