みじかいの


 欲──それは読んで字の如く、欲しいと思うこと。願い求めること。
 パーシヴァルは自らが持つその感情について否定することはなかった。理想の国を造るという信念、己の強さ、剣技への向上心、数えてみればきりがない。寧ろその感情が自分自身を突き動かすものであるならば、自分は貪欲な人間なのだろう。それもそうだと、今自分の下に組み強いている少年の淫らな姿に目を細める。

 濡れた瞳、火照った頬、だらしなく空いた口から漏れるのは、言葉を成さない甘ったるい喘ぎばかり。何度も重ねたグランとの行為の中、恥じるな、声を聞かせろと言っているのはパーシヴァル自身なのだが、それを塞いで奪い取るのもまた堪らなかった。
 ずぷりと繋がっている下半身同様、口内で舌を絡め合う。上も下も、本当に体ごと溶け合っていくような感覚に陥る。途方もない快楽にまた膨らんだ男の本能を、最早性器と化した少年の内壁がきゅう、と締め付ける。その心地よい刺激にパーシヴァルはグッと奥歯を噛み締めた。果てるにはまだ早い。ごちゅ、と奥を穿つと、グランの体がびくびくと震えた。腹の間でとろりと濡れた生温さが、グランの身に起きたことを知らせてくれる。最早女の体と変わらない。まだ齢十五だというのに、自分の手でこんな風になってしまった。不憫だと思うよりも遥かに悦びの方が勝っていた。

 こんなはずではなかった。こんなはずではなかったが、改めるという発想が消えたのはいつからだっただろうか──この少年との出会いを一言で表すならば、あらゆる意味で「一目惚れ」というものなのだろう。
 まず家臣にしたいと思った。そのためにグランが率いる騎空団で行動を共にするにつれ、ますます少年のことが気に入った。そこに自分だけのものにしたいという感情が生まれるまでに、そう時間はかからなかった。パーシヴァルは想いを告げ、グランもそれに応えた──そこから先はもう、止まらなかった。

 それでも時々、パーシヴァルはわからなくなる。自分は果たしてこの少年をどうしたかったのだろうかと。
 評価している、人間として。剣を振るう者として。団長として。
 家臣にしたい。未来の自分の隣に置いていたい。
 好きだ。愛している。触れたい。もっと触れたい。抱きたい。繋がりたい。もっと深く。
 今までになかったことだ。この少年にだけ、どうしても──こんなにも欲深い自分をパーシヴァルは知らなかった。

 持て余す欲望に突き動かされるように、パーシヴァルはグランの中で昇り詰めていく。
「お前が欲しい」
 うわ言のように繰り返される言葉。そんなことはもう、ずっと前から知ってる。わかってる。けれど今のグランに言葉を紡ぐ力は残っていない。唯一できたことと言えば、繋いだ指に力を込めることくらいで。
 最奥をこれまでにないほど強く突かれ、いよいよグランは最も激しい絶頂を迎える。同時に体内にどぷりと注がれた熱を受け止め、その余韻に酔いしれた──きもちいい。パーシヴァルのことを一番感じるこの瞬間が堪らないだなんて、言ったら幻滅されてしまうだろうか。

 貴方に満たされることを求めて仕方がないのだと、少年もまた欲を知る。
 
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