みじかいの

(カトグラ)

「いいんですか? 僕とこんなことしていて」
 我ながらどの口が、と思いながら、気持ちのいいところに捩じ込んでいくと、グランさんは僕のことを締め付けながら甘い悲鳴を上げた。
 どの口がと言いたげな視線を向けてきたのも一瞬、またその瞳はとろりと快楽に堕ちていく。そんなことよりこのナカにぶち撒けたくて仕方ないので僕が動き始めたからなんですけど。
「知っていますか? チョコレートには媚薬の効果があるらしいですよ」
 そんなどこかで聞いたことを耳元で囁いてみると、またきゅっと締まった。まるで僕をもっと奥まで誘っているみたいに。
 全く僕にどうしろと言うんでしょうねこの人は本当に!

 軋むベッドの傍らには、食べかけのチョコレート。僕がグランさんに渡して、さっき食べたものだ。
 本当にそうなのかどうか、ですか?
 見たらわかるでしょう、そんなことはどうでもいいんですから。

 









(エセジタ)

「ンっ……ぁ、ん……えっへ……んん……っ」
 甘い。
 ジータの唇も、舌も、口の中も全部、チョコレートの味がする。ジータとのキスはいつだって甘いと思うけれど、今日は何だか特別なものに思えた。
 あげるとか渡すとかじゃなくて、一緒に選んで一緒に食べようと言ってくれたチョコレートは、こんな形で私達の間で溶けていった。

「ん……もっと、触ってもいい?」
 うっすらと濡れたショーツの上を撫でながら、私はわざわざこんなことを訊いている。
 拒まないのを知っていて、敢えて赦されようとしている私の醜さも、きっとジータは気付いていると思う。


(ねぇエッセル、どれがいいかな?)
(ん……ジータが食べたいのでいいよ)
(もう! エッセルいつもそれなんだから〜)
 そう、いつもジータにそう言われるけれど、だって本当にそう思うから。

 全部ジータだけ。
 私が欲しいのは、ジータだけなんだよ。

 
 
 
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