みじかいの

「またお前は……何故そうやって軽率に肌を晒すんだ……」
 さながら説教のようにも聞こえるが、その当人の肌を弄っている人間の言う台詞ではない。
「別にっ……んっ、軽率とかっ、ぁ、やっ」
 グランは抗議の声を上げようとするが、どれもこれも不発で終わった。キスで遮られたり、胸の頂をくにくにと玩び始めたり。
 まさかこれが炎帝パーシヴァルのしていることだと言って、一体誰が信じるのだろうか。
(言わないけどさ……)

「これは武術の修行をして、山の精霊からもらったありがたーい服なんだよ」
「ほう……色のセンスは評価しよう」
「あ、そう……」
 どうやら赤の布地については気に入っているらしい。わかりやすいな……と、グランは心の中で呟いた。
「て言うか、別に今更だと思うんだけど……水着も何回も着てるし、上を完全に脱いじゃってることだってあるし」
「グラン、お前はもっと周囲の者達からどのような視線を向けられているか自覚すべきだ」
「はぁ……ッん、んンッ! んぅっ、ふ……」
 また発言を遮られたことには変わりないが、今されているキスは容赦がない。舌を絡めては蹂躙され、息をつく間も与えてくれない。
 それどころか、ぎゅっと抱きしめられ体が密着したことにより、パーシヴァルがいかに興奮しているか分からされている。
 それはもう物理的に、熱く硬い。パーシヴァルがそうなっている理由がわかってしまうからら困る。そして間違いなく押し付けられている。おそらく目的はこちらの方なのだろう。
「っは……もー……僕のことそういう目で見てるのはパーシヴァルだけだと思うけど?」
「それはどうだろうな」
 言いたいことだけ言ってははぐらかし、それでいて指先の戯れが止まることはない。

 何かあったのか、そんなにモンクの服が気に入らないのか(色はいいと言っているくせに)、パーシヴァルだってそこそこ脱いだり着崩してるし、すごく人たらしじゃない?──言いたいことはたくさん浮かぶ一方で、与えられる快楽はいよいよ深くなる。右側の突起を舌先で嬲られた瞬間、グランはひっと高い声を上げた。
 ずくんとお腹の奥が熱くなり、だんだんほしくなってくる。吐き出したい欲よりそっちが勝るようになってしまったのも、全部この男のせいなのに、一体何か不満なのだろうか。
 けれど、誰もが恐れ、見惚れ、引き寄せられる──そんなパーシヴァルがこんなにも自分を求めている。
 グランはそれがたまらなく愛おしいと思う。自分でいいのだと分からせてくれることが、純粋に嬉しい。

「っ……こんな、パーシヴァル、知ってる、の……っ、僕だけ、だよね……?」
 グランがどうにか紡いだ言葉に、パーシヴァルは面食らったような表情をしたのも一瞬。
 フッと微笑んだ瞳の奥に写る少年もまた、笑っていた。

「そうだ、お前だけだ」

 
5/36ページ
スキ