みじかいの



「ほんと、ヴェインの食べっぷりは見てて気持ちいいよね」
 グランからの言葉を受け、ヴェインはピタリと動きを止めた。
「ほうか?」
「ふふ……言えてないよ」

 口の中の物を飲み込むよりも先に声が出てしまうのもまたヴェインらしいと、グランの顔から思わず笑みがこぼれる。いかにも男性といった逞しい体を動かすには、それだけのエンジンも必要なのだろう。
 がつがつ、という表現がよく似合うと思う。こんな風景をどこかで見たことがあるような……そうだ!
「犬……そう、よしの後の犬みたいだ」
「なんだそれ。つかグランまで俺のこと犬扱いすんのかよ~」
 一瞬、ヴェインの脳裏に眉間を寄せたパーシヴァルの顔が過った。自分のことを
「駄犬」と称するあの声がやけに鮮明で、つい先のグランの言葉と重ねてしまったのだ。
 トカゲではないと言って憚らないビィではないが、俺は犬じゃねえ! と、ヴェインは心の中で叫ぶ──そう、犬ではないのだが。

「……でもよしの後ってことは待てができてるってことか」
「ははっ! そうだね! よーし、お利口さんだ」
 どうやらこのヴェインが自分を犬とした場合の見立てがグランのツボに入ったらしい。笑いながらの物言いは、まるでその飼い主のようだった。
 それならば──折角なので、最後まで付き合ってもらってもらおうか。
「じゃあさ、お利口さんの俺に、ご褒美くれでもいいんじゃないか?」
 よしの後の犬だとするならば、ヴェインが待っていたのは他でもない。
 いつの間にか距離を詰められ戸惑う主人は思わず叫んだ。
「待って!」
 グランは何かを察したように顔を赤くして、どうにかヴェインから視線を逸らそうとする──その表情がたまらないのだと、毎回ヴェインのスイッチを入れてしまっていることに少年は気付いていない。

「もう待った。さっきよしって言っただろ?」

 今度はグランが腹一杯になるまで、な?


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