みじかいの


「カトル~頼んだよお願い! 喪失入れて!」
「はぁ……と言われてもこればかりは僕にもどうにも」
「何でもするから!!」
「……ん? 今「何でも」と?」




 というあまりにも雑な前提の元、カトルはその「何でも」行使権を堪能している。

「そう……これから僕のコレが団長さんのそこに入るんです。想像しながらしっかり解して下さいね」
 口調は努めて優しくと心掛け、カトルは自分に跨がるグランの耳元でそう囁いた。すると言葉通りに想像したのだろうか。今の状況への羞恥と、これから訪れるであろう快楽の狭間で、グランはびくりと体を震わせた。

 「何でも」してくれると言うものだから、カトルがそうさせたのだ。


 ふーふーと荒い息を吐きながら、グランは自分の指で自分の中を掻き回している。
 そしてもう片方の手はカトルに導かれ、コレこと勃起したカトルの分身に触れていた。
「そこ、あなたの指の動きに合わせてくちくちいってるの、聞こえますか? これ団長さんが自分でやってるんですよ。いやらしいですね」
「だっ、て、カトルっ、が、しろっ、てぇ……」
「何でもすると言ったじゃないですか。ほら、頑張って下さい。僕だってもっとあなたの期待に応えたいんです」
 カトルは切実だという表情を作り、じっとを見つめる。するとグランはきゅっと目を閉じてしまったが、おずおずと指の動きを再開した。
 チョロい、チョロすぎる──カトルは心の中でぐっと片手を握り締めた。



「それでは……自分で広げて、ゆっくり腰を落としてみましょうか。息を止めてはいけませんよ」
「ん……」
 グランは自分で解した入り口に人差し指と中指を添え、左右に押し広げる。くぱぁ……と小さく開いた口を、先走りで濡れるカトルの先端に宛てた。馴染ませるように腰を揺らす。ぬちぬちと局部がキスをしているかのように触れ合っている。
「っ……堪らないな……」
 その光景に、カトル自身も思いがけず興奮を声にした。
 ゆっくりでと気を遣ってみたものの──じわじわと飲み込まれていく視覚の暴力と、それに対して物足りないと感じてしまう矛盾が、まさに堪ったものではない。
「ぁ、ん……全部、はいった……?」
 残念ながら概ね、といったところだったが、カトルはよくここまで耐えたものだと自分を讃えた。


 半分冗談のつもりで始めた手前、流石にどこかで翻されると思っていた。
 しかし漬け込めてしまったものだから、カトルには若干の戸惑いもあった。
 こんなことをする関係なのだから、余計気を許している部分があったとしても、だ。
(まったく……僕相手に本当に……この人は、こんな)
 期待に応えたいと思っているからこそ、従順さを見せつけられる分もどかしくなる。

「……そもそも仕様がわかっているなら僕じゃなくてもいいでしょう」
 その方がどう考えても合理的だ。カトルは自分がグランの立場ならそうすると思っている。
 しかしこれはカトルの思いではない。
 他でもない、カトルが強く惹かれたグランの思いなのだ。
「っ……あれ、は、君に、しかっ……できない、こと、だ……」
 腹部を満たす圧迫感に耐えながら、グランは懸命に言葉を紡ぎ、それはそうですが──そう言いかけたカトルの言葉は、音になる前に掻き消された。
「それ、に、僕が、君と一緒がいい」
「は……?」
 呆気に取られること数秒、カトルは一気に溢れ出す感情に飲まれぬよう、ぐっと奥歯を噛み締める。
 信頼されている事実に、その優越感をこの人から与えられることに、カトルの心は打ち震えていた。

「えっ!? なんで、おっきく」
「ちょっと黙って下さい」
 体にまで影響が出たのは想定外だったが、この状態であんなことを言われてはもう楽しんでいる余裕などなかった。
 早く突き上げて啼かせて──奥で一気にぶちまけたくて仕方がない。
「そうですね……後は僕が満足するまで頑張って下さい」

 だって何でもするって言いましたよね?

(今のそういう流れだった!?)
(それとこれとは話が別です)
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