みじかいの

 
 ああ、もう朝か。でももう少しだけ…なんて、目覚めかけの自分を自分でもう一度寝かし付けようとした。
 何故なら意識よりも先に体の一部が覚醒していたからだ。察してほしい。今起きて抜くのも面倒だから、やっぱり寝よう。

 そう思った俺の体にずしりとした重みを感じて、しかもそれは人の温かさで。さらに見覚えのあるシルエットはまさかの人物だ。
 えっ? なんで団長がいるんだ? 混乱する俺に団長はうっとりするほど優しく微笑んだ──大丈夫。カイン、僕に任せて、と。いやいやいや、いや嫌じゃない寧ろ願ったり叶ったりだけど、俺結構ムードとか気にするタイプだからもうちょい段階を踏んでから……なんて言う暇もなく、団長は俺の股間の膨らみに手を掛けて、いや、やばいって、団長ちょっと待っ……!

「…………嘘だろ?」
 後はお察しの通りだ。差し込む朝日と小鳥のさえずりまでお膳立てされているのに、さっきまでの温もりは影も形もない。夢なら醒めないで、なんてよくあるフレーズが頭に過った、その時だった。
 ドアをノックする音がする。俺の名前を呼ぶ声の主は、間違いなくさっきまで聞いていたのと同じはずだ。思わずごくりと唾を飲み込んだ。
「ごめん、起こしちゃったかな? ちょっと明日の依頼の相談がしたくて……」
 みたいなことを言っていたと思うけど、あんまり覚えてない。
 それから俺は段階を踏みたいタイプだと思ってたけど、そうでもなかったみたいだ。
 もう目なら覚めている。
 はっきりと、今しかないと思った。

 団長をベッドの中に引き摺り込んで、今度は俺が見下ろした。
 さっきと違って驚いた顔をしている団長に、ここから先は現実であれと俺は願うのだ。
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