今日の夢見〜獏は密かに夢を見る〜

「ア"〜、さ"み"ィ"〜!!」
『しょうがないでしょう。今は冬なのですから。』
「オマエはユキダルマだからだろォ〜⁈オレは春のカミだぞォ!」
『…なら、その気性が荒いのも直されては?』
「カンケーねェだろうがヨ!…ッチ!」

…ガラ悪いな、こいつら。
ん?俺?あぁ、俺はこいつらを作った張本人だな。
山の奥の方にある村でひっそりと畑作をしてるんだよ。
んでこいつらは俺が作った雪達磨と案山子だな。



…どうしてこうなった。

いや、たしかに気持ちを込めて作ったぞ?

雪達磨は丁寧に、優しく作ったよ。…そこ、ガラじゃねぇとか言うな。

案山子は…うん。まぁ、だるいな…とか思ってたけど!毎年ちゃんといたわってるんだぞ。



何で、こうなるかな…。
「おいオイ、誰に話しかけてンだよォ!気色わりィ!」
『駄目ですよ、案山子。主に悪態をついては。』
あ〜。面倒くせぇ…
「大体よォ、冬になったら案山子オレぐらい仕舞えヨ!この怠惰がァ!」
うるせぇな!いいだろ別に!お前はそのままそこにいろ!
『主も突っかかっては駄目です。彼は言うことなど聞きませんから。』

…知ってるから。あ"〜、早く春が来てくれねぇかな。
「ッハン!分かってるじャねェか!春はオレの独壇場だぜェ!」
『春は美しいですよね。花が咲き乱れて、小鳥がさえずるのですから。…私は見れませんが。』
そうだな…
「ハハ!ざまァねェなァ!それでよォ…」







まぁ、こんな風にこいつらとダラダラ話して3ヶ月。
もうそろそろ春が来る。


…展開がおかしい、だと?
そんなの知らねえよ!3ヶ月分全部喋ってたら足んなくなるだろうが!メタ発言?良いだろうが!お前がここにいる時点でアウトだろ!



…はぁ。ま、取り敢えず3ヶ月経ったんだよ。有無は言わせねぇ。
「オマエなにボ〜ッとしてンだよォ!まだ話し途中じャねェか!」
『そうですね…もうそろそろ"立春"ですから。ぼ〜とするのもしょうがないでしょう。』
「立春かヨ…ア〜ア、オレの活動がいよいよ本格的になるぜェ!」
そうだな。雪達磨も今年はありがとな。案山子こいつに構ってくれて。
「ア"ア"⁈構ってくれてってどーゆーことだヨ!」
『いえ、お気遣いなく。私自身も同じ人形ひとがたと話せて嬉しかったですし。』
「ンだと⁈…ま、オレもヒサビサに話し相手がいて飽きなかったけどヨォ!」

いや〜、俺もお前らのおかげで去年より楽しかったしな。毎年案山子の相手はきついぞ。
「オイ!それはどーゆーことだァ!」
もう夜遅いし俺は寝るからな。
『はい。お休みなさい、主』
「永遠に寝てナ!」
『…あなた、後で話がありますから。』
「ア"〜?ンだよ、最後の最後にィ?ったく…しょーがねェな!」









『…行きましたね。』
「ンだよォ、話ってよォ…」
『私は明日で昇天かえってしまいます。』
「ア"ン?それがどうした?」
『私は貴方を信用しています。それで頼みたいことがあるのですが…』
「アー、そんなことかヨ。いいゼ。オマエの"最期"の言葉だしナ!」
『やめてください。せめて"最後"にしてください。では、…………して欲しいのですが、よろしいですか?』
「ア"ア"⁈なんでそんな面倒なことやンなきャなんねェんだヨ!」
『聞いてくれると言ってくれたではありませんか。』
「…ッチ!冥土の土産にしなァ!」
『だから、私を殺さないでください。…頼みましたよ。』








翌朝、雪達磨の人形はいなくなっていた…つーか、魂が抜けたって感じか?

「ッシャア!オレの出番だぜェ!!」
あぁ、よろしく頼んだぞ。
「ッハン!言われなくてもやるに決まってンだろォ⁈」
…珍しいな、お前がそんなに躍起になってるの。
「…ユキダルマのヤローに言われたんだよ。"ちゃんと主に奉仕しなさい"ってなァ!」
そう言うことか。なら心配はいらねぇな。
「モチロンだ!…その代わり」
…ん?
「…来年もユキダルマのヤローを作ってくれよなァ。報告しなくちャ何ねェんだよ」
…はは。お前も意外とあいつのこと気に入ってるんだろ。
「ア"ア"⁈ウゼェ‼︎やっぱオマエなんかにホウシなんてしてやらねェからなァ‼︎」

はいはい。わかったよ。来年も楽しくなりそうだな。






「…(見てンのか?ユキダルマのヤロー。覚悟しとけヨ!オレはオマエみてェにすぐ消えるような人形ザコじャねェんだヨ!)」
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