雨の日(まもうさ)
「あ……雨だ」
天気予報をろくに見ずに十番街の文房具屋から出たうさぎはポツリと頬に一粒落ちた雫をふと触って言った。
よく見れば雑貨屋の店先にはビニール傘が売られていたり、家を出た時も遠くに暗い色をした雲が見えていたり。いくつものサインがあったのにそれすら気にしていなかった自分に苦笑する。
まだ小雨だし大丈夫。と能天気に考えて一歩踏み出そうとした時、雨は激しく叩きつけるようなものに変わって思わず小さく悲鳴を上げた。
と同時に誰かが軒下に入ってきて顔を上げれば、相手も同じく驚いた顔をして雨を払っていた手を止めた。
「うさ!?」
「まもちゃん!」
うさぎは偶然恋人に会えた嬉しさが込み上げるが、ずぶ濡れの衛に慌ててハンカチを取り出して背伸びする。
「サンキュ」
濡れた髪をそっと拭ってくれているうさぎの手を取って柔らかな声で言うと漆黒のそれを自分で拭いてから息を吐く。そして頬を滑った雫が顎を伝うのを手で拭った。
その一連の光景から目を逸らすことができずにいるうさぎに視線を送る。
すっと細められた目に囚われてうさぎの肩はぴくりと動き、心臓もドクドク鳴り始めた。
「どうした?」
「な、んでもない! 珍しいね、まもちゃんが傘忘れるなんて」
「ん。課題に煮詰まって外に出たら降られた」
手を握られ、自然と恋人繋ぎをしてくる衛にうさぎはまたしても心臓が騒ぎだす。もうとっくに色々なことをしているのというのに、なぜだか今の衛からは甘くて逃げられないような何かを纏っていて平静ではいられない。
「そ、そうなんだ」
衛に手の甲をするっと親指で撫でられて、そんな心情に気付かれていることが分かって更に顔が上げられなくなってしまう。
「でも、うさに逢えた」
すぐ近くで聞こえる声にとうとううさぎは降参する。
「うん、あたしも…会えてうれしい」
濡れるのも気にせず左腕にぴとりとくっついてぽそっと答えるその声に衛の中の何かが灯る。
「このままうちにおいで」
「課題は…」
続く言葉はキスに飲み込まれる。
唇が離れ、真っ赤な顔をして小さく頷いたのを見届けると、衛はその手を引いて雨の中を二人で駆け出した。
天気予報をろくに見ずに十番街の文房具屋から出たうさぎはポツリと頬に一粒落ちた雫をふと触って言った。
よく見れば雑貨屋の店先にはビニール傘が売られていたり、家を出た時も遠くに暗い色をした雲が見えていたり。いくつものサインがあったのにそれすら気にしていなかった自分に苦笑する。
まだ小雨だし大丈夫。と能天気に考えて一歩踏み出そうとした時、雨は激しく叩きつけるようなものに変わって思わず小さく悲鳴を上げた。
と同時に誰かが軒下に入ってきて顔を上げれば、相手も同じく驚いた顔をして雨を払っていた手を止めた。
「うさ!?」
「まもちゃん!」
うさぎは偶然恋人に会えた嬉しさが込み上げるが、ずぶ濡れの衛に慌ててハンカチを取り出して背伸びする。
「サンキュ」
濡れた髪をそっと拭ってくれているうさぎの手を取って柔らかな声で言うと漆黒のそれを自分で拭いてから息を吐く。そして頬を滑った雫が顎を伝うのを手で拭った。
その一連の光景から目を逸らすことができずにいるうさぎに視線を送る。
すっと細められた目に囚われてうさぎの肩はぴくりと動き、心臓もドクドク鳴り始めた。
「どうした?」
「な、んでもない! 珍しいね、まもちゃんが傘忘れるなんて」
「ん。課題に煮詰まって外に出たら降られた」
手を握られ、自然と恋人繋ぎをしてくる衛にうさぎはまたしても心臓が騒ぎだす。もうとっくに色々なことをしているのというのに、なぜだか今の衛からは甘くて逃げられないような何かを纏っていて平静ではいられない。
「そ、そうなんだ」
衛に手の甲をするっと親指で撫でられて、そんな心情に気付かれていることが分かって更に顔が上げられなくなってしまう。
「でも、うさに逢えた」
すぐ近くで聞こえる声にとうとううさぎは降参する。
「うん、あたしも…会えてうれしい」
濡れるのも気にせず左腕にぴとりとくっついてぽそっと答えるその声に衛の中の何かが灯る。
「このままうちにおいで」
「課題は…」
続く言葉はキスに飲み込まれる。
唇が離れ、真っ赤な顔をして小さく頷いたのを見届けると、衛はその手を引いて雨の中を二人で駆け出した。