wedding birthday

 プロポーズを受けたあたしは本当に嬉しくて嬉しくて。何度も何度も催促して言葉にしてもらった。

「ねえまもちゃん?」
「もう最後の一回は言ったぞ」

 ベッドの上で呆れながらも笑ってくれる大好きな人に額をこつんと当てて笑い返す。

「あのね、婚姻届なんだけど…」
「ん?」
「8月3日。まもちゃんの誕生日に出しにいきたいなーって思うんだけどどうかな」
「ああ、覚えやすいし、いいんじゃないか?」

 ご機嫌にほっぺにちゅってキスして満足そうにしてる彼の顔を両手で抑えて「もー! そうじゃなくて!」と言い返す。でもあたしも結局ほっぺをふにっとしたままキスしちゃった。だって、ね? プロポーズされて、大好きな人とずーーっと一緒にいられるんだって思ったら浮かれてしまうのは仕方ないじゃない?
 でもこれからあたしが伝えようと思っているのは大事なことだから。そっと彼の右手を両手で包んで見上げた。
「あのね、まもちゃんのお誕生日はまもちゃんのパパとママがお星様になった日…でしょ?」
 
 あたしの言葉にはっとしてからうんと頷くまもちゃんの顔は見えなくなった。彼の腕に丸ごと包まれて心臓の音がトクトク聴こえてくる。

「だからね、今年からは、まもちゃんのお誕生日は家族がもう一度できた日になれたらいいなって…思ったの」
「うさ…」

 ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。

「そんな風に…考えてくれてたのか」

 彼の震える腕に手を添えて頷く。
「まもちゃんや、まもちゃんのパパとママが嫌じゃなければだけど」
「嫌なわけないっ!」

 声を荒げるまもちゃんに驚いて顔を上げれば頬に涙をこぼした彼に深いキスをされて、あたしの視界もぼんやりと滲んで溶ける。

「うさ…うさこ……好きだ…ありがとう…あいしてる……」

 繰り返すキスの合間に紡がれる無防備な言葉に胸がキュッと鳴る。それに合わせるように瞳から涙がポタポタ落ちていった。
 まるで、パパとママがいなくなっちゃった頃の小さなまもちゃんを抱きしめているかのような気持ちになったの。

 あたしは、まもちゃんの強いところも優しいところも弱いところも全部好き。守りたいし、愛しいって思う。
 
 ヤメルトキモ スコヤカナルトキモ

 ふと、頭の中で流れる結婚式の誓いの言葉。

「あたしたち、結ばれるために生まれてきたのよ」

 あの時よりもずっとずっと、そう思える。それだけの時間をあたしはまもちゃんと育んできたから。

「ああ。もう離さない」
「嬉しい…っ」
 キスを贈ると瞳をキラキラさせたまもちゃんが今までで一番幸せそうに笑うから、思わず言葉がこぼれた。

「結婚しよう、まもちゃん」

 最後のプロポーズはあたしから。

 頬を染めて嬉しそうに笑うまもちゃんは、あたしを抱きしめてベッドに沈んでこめかみにキスをした。

 もう一回してもいい?

 肩口に額を寄せて甘える彼をきゅっと抱きしめる。
 
 あたしたちは揺蕩う幸福に心を寄せ合って静かに激しく身を委ねていった。
 

おわり
2025.8.3
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