花曇り色に濡れて(エンセレ)
1年間のうちに限られた日しか咲かない花をどうしても見せたかったエンディミオンは普段は絶対にしない提案を前回の逢瀬の時にした。
「次にここに来るのは地球の周期で7日後にしてもらえないだろうか?」
「ナノカゴ?」
感覚も間隔も何もかも違う星にいるためキョトンとするプリンセスに護衛に来ていたマーキュリーが説明して少し理解できたらしく、じゃあもっと早くあなたに会えるのね!と破顔した。
「エンディミオン…!これは、これは何?!すごいわ…!!なんて綺麗なの…!?」
「桜、だよ」
綿々と続く桜並木を前にして思った以上に喜んでくれた恋人に、これ以上ないほどに柔らかな笑みを浮かべて王子は答える。満開のこの時期は一瞬で過ぎてしまうから四天王の知恵を借りつつ天のめぐりと花の知識を総動員させてこの日にきて欲しいと誘ったのだが、花曇りの天気に恵まれて美しい光景を見せることができて本当に良かったと安堵した。
「さくら…まるで空が半分薄桃色になったみたい」
見上げてキラキラとした瞳でそう言うセレニティは両腕を広げてニコニコと笑った。
王子は無邪気で可憐な姿に胸をときめかせていたが、あまりにも桜に夢中で後ろを一度も振り向いてくれないからか、護衛に来ていたクンツァイトが遠目に見ても分かるほどに徐々に顔を曇らせていく。
そこに春の風が吹き荒れて、花びらが舞う。感嘆の声を上げてそのドレスをふわりと翻させて回る王女は美しいけれどどこか儚く、消えそうに見えて。
「セレニティ」
「きゃっ」
花とダンスをする彼女を抱き寄せてしっかりと腕の中に閉じ込めた。突然の温もりに頬を染めるセレニティは何も言わない彼の背をそっと撫でてみる。
「エンディミオン?」
自分で誘ったくせに、桜に嫉妬するような己が情けない。情けないのに、どうしても彼女相手だとそんな幼い感情が止まらない。撫でられる背中の小さな手にひどく安心する自分は一国の王子としてあるまじき感情なのに、恋人の前ではどうしたって一人の男になってしまう。
「セレニティ」
両頬を包んだ彼女の空色の瞳は桜を映して、いつもよりもどこか魅惑的で。それに誘われるように唇を重ねた。
「これを君に」
キスの後、気恥ずかしそうに笑い合った二人は手を繋いでしばらく桜並木を歩き、休憩に白いベンチに腰掛けるとエンディミオンが小さな包みを差し出した。
嬉しそうに礼を言って開けるとわあっと声をあげて光にかざして見る。
「可愛い…!ブローチ?」
「ああ。桜はすぐに散ってしまうから、ドライフラワーにして作ってもらった」
桜の花を一つ閉じ込めてデザインされたそれを大層気に入った王女は何度もお礼を言う。
「そんなに気に入ってもらえて本当に良かった。実は…ほら、オレの分も」
手のひらを広げて見せた王子は目元を赤くして笑う。
「嬉しい!お揃いね」
勢いよく抱き付くセレニティにうわぁ?!とバランスを崩した王子はそれでもしっかりと受け止める。
春の暖かい光の中で二人の笑い声が響いていった。
「次にここに来るのは地球の周期で7日後にしてもらえないだろうか?」
「ナノカゴ?」
感覚も間隔も何もかも違う星にいるためキョトンとするプリンセスに護衛に来ていたマーキュリーが説明して少し理解できたらしく、じゃあもっと早くあなたに会えるのね!と破顔した。
「エンディミオン…!これは、これは何?!すごいわ…!!なんて綺麗なの…!?」
「桜、だよ」
綿々と続く桜並木を前にして思った以上に喜んでくれた恋人に、これ以上ないほどに柔らかな笑みを浮かべて王子は答える。満開のこの時期は一瞬で過ぎてしまうから四天王の知恵を借りつつ天のめぐりと花の知識を総動員させてこの日にきて欲しいと誘ったのだが、花曇りの天気に恵まれて美しい光景を見せることができて本当に良かったと安堵した。
「さくら…まるで空が半分薄桃色になったみたい」
見上げてキラキラとした瞳でそう言うセレニティは両腕を広げてニコニコと笑った。
王子は無邪気で可憐な姿に胸をときめかせていたが、あまりにも桜に夢中で後ろを一度も振り向いてくれないからか、護衛に来ていたクンツァイトが遠目に見ても分かるほどに徐々に顔を曇らせていく。
そこに春の風が吹き荒れて、花びらが舞う。感嘆の声を上げてそのドレスをふわりと翻させて回る王女は美しいけれどどこか儚く、消えそうに見えて。
「セレニティ」
「きゃっ」
花とダンスをする彼女を抱き寄せてしっかりと腕の中に閉じ込めた。突然の温もりに頬を染めるセレニティは何も言わない彼の背をそっと撫でてみる。
「エンディミオン?」
自分で誘ったくせに、桜に嫉妬するような己が情けない。情けないのに、どうしても彼女相手だとそんな幼い感情が止まらない。撫でられる背中の小さな手にひどく安心する自分は一国の王子としてあるまじき感情なのに、恋人の前ではどうしたって一人の男になってしまう。
「セレニティ」
両頬を包んだ彼女の空色の瞳は桜を映して、いつもよりもどこか魅惑的で。それに誘われるように唇を重ねた。
「これを君に」
キスの後、気恥ずかしそうに笑い合った二人は手を繋いでしばらく桜並木を歩き、休憩に白いベンチに腰掛けるとエンディミオンが小さな包みを差し出した。
嬉しそうに礼を言って開けるとわあっと声をあげて光にかざして見る。
「可愛い…!ブローチ?」
「ああ。桜はすぐに散ってしまうから、ドライフラワーにして作ってもらった」
桜の花を一つ閉じ込めてデザインされたそれを大層気に入った王女は何度もお礼を言う。
「そんなに気に入ってもらえて本当に良かった。実は…ほら、オレの分も」
手のひらを広げて見せた王子は目元を赤くして笑う。
「嬉しい!お揃いね」
勢いよく抱き付くセレニティにうわぁ?!とバランスを崩した王子はそれでもしっかりと受け止める。
春の暖かい光の中で二人の笑い声が響いていった。