3 目覚め






第三話
『目覚め』






1コマ目の授業が終わって、テキストやらルーズリーフやらを片付けていると、正面に人の気配を感じる。

「あ~やか!今日バイト無い日だろ?飲みに行こうぜ!」

私はウンザリした顔をして声の主を見上げた。

「何で?」

キツい口調で返したつもりなのに相手は全然怯まない。

「決まってるだろ?お前とデートしたいの!」

「だから、何で私と!?海斗には言い寄ってくる女の子がたくさんいるでしょ?その子たちと行けば?」

私の言葉に苦笑している彼は、遠山海斗。高校からの腐れ縁。

「分かってないね、お前。俺は、彩花が好きなんだって。何度言わせるの?」

「悪いけど、信じられない。」

実際、この男の女性遍歴を考えたら到底今の言葉は信じられないのだ。

海斗は非難の声を上げていたけど、全く無反応な私の態度と、後ろから友人に呼ばれたこともあり、しぶしぶとそっちに退散して行った。


代わりに私の友人の智美が近付いて来る。

「またやってたの?」

面白そうに聞いてくる彼女にわざとらしく溜め息を付いてみせた。

「別に?何も?」

「いつ見ても意外な組み合わせだよねー。クールビューティーの優等生彩花と、学年一の遊び人遠山!」

「ちょっとやめてよ!あいつとひとくくりにするのは!」

「あはは!でもさあ、見た目は美男美女なんだから付き合っちゃえばいーのに!」

智美の軽い発言に、柄にもなく大声を上げてしまう。

「馬鹿なこと言わないで!私にはずっと好きな人が…!!」

そこまで言ってはっとなる。勢いに任せて出た言葉だとはいえ、敢えて聞かせることでも無かった。
だけどこの手の話が大好きな彼女が聞き逃すなんてことも当然あるはずがなく…。

「えー!?彩花好きな人いるの!?初耳ー!!」

智美は、その性格をよく表すような活動的な明るい色のショートヘアをわしゃわしゃと掻きながら、半径10mは届くであろう大声を上げて、私に輝きを放つ瞳を向けていた。


「…。」


反対にどこまでも寡黙を押し通そうと決めて、残りの片付けを開始する。

海斗にも智美の大声は聞こえたと思うけれど、それは特に気にしてはいなかった。

それよりも隣の友人が質問するのを諦めてくれるまで黙っていることのほうに集中していた。

しかし私が何も答えていないにも関わらず、智美は白熱した状態で話のまとめに入っていた。

「そっかそっか~!どうりで彩花は色んな男にコクられても大抵断るし、付き合っても長続きしない訳だ。心の中に超イケメンの大好きな彼がいるんだもんねえ!なるほどー!!」

彼女の想像力と、あながち間違っていない内容に思わず苦笑した。

「ま、そんなにいいもんでもないのよ。向こうは、私になんて二度と会いたくないだろうし…。」

「何それーー!?彩花健気すぎ!!」

いちいち声が大きいよ。と思いながら眉をハの字にしている智美を正面からしっかりと見る。

続きが聞きたくて仕方がない好奇心に溢れた瞳が真っ直ぐに私を見つめていた。

「この話はこれでおしまい。そろそろ教室移動するよ。」

私は既に片付け終わった荷物を持つと席を立つ。

「あーもう!彩花待ってよ!」

智美も慌てて自分の席から荷物を取ると、さっさと歩く私の事を後ろから不満そうに叫んでいた。



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