最終話 それぞれの未来へ
―一ヵ月後―
海斗と彩花は操られていたときの記憶が全て無くなったらしい。
ルナとアルテミスがそれぞれ彼らの家にそっと送り届けた後、二人に会うことはあれ以来無かった。
ただ、しばらく様子を見ていた二匹によると、すっかりと元気に過ごしている代わりにあの頃の記憶が無くなっている事も分かったそうだ。
そして二人はあれ以来一緒にいることが増えたという事も聞いていた。
ある日。俺の部屋で彩花からもらったアルバムをうさと見ているときだった。
うさは寂しそうな顔をしたが、俺のほうが寂しい顔してるよと言われてしまって。
互いに苦笑したあとそのページをゆっくり、ゆっくりとめくっていく。
最後のページまできたとき、裏表紙に小さく書かれた文字を見つめる。
『もう一ど、まもる君に会えますように』
それが、ナタリアの想いとも重なって見えて。
俺とうさ。そして彩花との数奇な運命を考えずにはいられない。
けれど、うさはそんな運命を飛び越えて遥か昔と変わらない柔らかな微笑みを浮かべて俺の手に重ねてきた。
「彩花さんの願い、叶えなくちゃね!私ね、彩花さんといっぱい話したいことがあるの。」
「そうなのか?」
「うん!まもちゃんのこと、好きな女の子同士の大事な話♪ずばり、まもちゃんはどんな子だったんでしょーか!とかね♪」
「なんだよ、それ。」
嬉しそうに得意になって言う彼女に俺も思わず吹きだす。
「でも今は海斗さんとラブラブなんだよね。」
「そうだな、俺もうさとらぶらぶだし。」
自分では言うくせに俺が同じ事を言うとうさは真っ赤になる。
そんな彼女が可愛くて無防備なその唇にキスを送った。
俺たちは平和で幸せな日々を送っていた。
仲間も皆いつもの生活に戻り、それぞれの学園生活を楽しく過ごしている。
うさも前と変わりなく元気で、俺の横で大好きな笑顔をいつも向けてくれている。
そして今日。いよいよその日が来た。
「あー緊張するよー!」
叔父の家の前で、俺の隣に立つ恋人は深呼吸した後そう言った。
「大丈夫だって。うさはいつも通りでいればいいんだから。」
繋いだ手を握り返すと出来るだけ落ち着けるようにゆっくりと語りかけた。
「そうかな?」
「そうだよ。」
「へへ…」
「何笑ってるんだ?」
「ううん!何でもない!彩花さんに会えるのも楽しみだな。」
「向こうは覚えてないけどな…」
うさの言葉にほんの少し言葉を濁して答えると、大きな声で「それでも!」と彼女は言い返した。
「私ね、彩花さんとは絶対いいお友達になれると思うの。」
「…ああ。そうだな。」
うさのその、誰もを包み込む温かい光はどんな人間も惹き付けて止まないから。
一度は失った光がまたこうして俺の隣で輝き続けてくれている。
それだけで俺はこんなにも幸せなんだ。
微笑み合うと頷いてインターホンを押す。
するととても懐かしい叔母の声がインターホン越しに聞こえてくる。
名乗れば慌てた様子で切れてすぐに玄関が開かれた。
「久しぶりです叔母さん。」
「初めまして!月野うさぎです!!」
この子が俺の…大切な人です。
おわり
4/4ページ