最終話 それぞれの未来へ
「お母さま。今日はカイルは来ないの?」
「セレニティは本当にカイルが好きね。」
「だって!いっぱい遊んでくれるんだもん。」
シルバーミレニアムのドームの庭園の中で、まだ幼かったあの頃の私は母であるクイーンセレニティと話していた。
カイルは幼い頃によく私の遊び相手をしてくれた貴族の子供だった。
いつも泉の色、薄いブルーの優しい瞳が好きだった。
歳は離れていたけれど大切な遊び友達だった。
「カイル、これを受け取って?」
ある日、少し成長した私はクリスタルでできたブローチを彼に差し出す。
「セレニティ様、これは…」
困惑しながらも嬉しそうに聞き返すカイル。
「あげるわ。あなたは大切なお友達だから。」
「友達…ですか。」
「そう。もしかして…そう思っているのは私だけだった?」
影を落として言う彼に不安になった私はか細い声でそう言った。
「いいえ!そんなことありませんよ。ありがとうございます。大切にしますから。」
ようやく笑顔になってくれた友人の顔を見てホッとして私も笑顔になる。
けれど、それが彼を見た最後だった。
なぜなら、彼はその後どこからか忍び寄る影に心を支配されて地底に暗黒帝国を築き、やがて脅威とみなされてクイーンによって滅ぼされてしまったから。
「カイル…」
地上に戻り、涙を流す私の横でまもちゃんが心配そうに肩に手を置く。
海斗さんは迎えに来ていた人間となったルナとアルテミスが先に司令室へと運んでくれていた。
「うさ?どうしたんだ?」
手元に残るブローチを眺める。
ごめんなさいカイル…
気付かなかった。
あなたのこと
私はまた救えなかったのね。
「ごめんなさい。」
涙がブローチに落ちる。
―いいんだよ。プリンセス・セレニティ―
「カイル!?」
―君のお陰でまた暗黒の力に支配されてしまった私の心もようやく浄化されたのだから―
ブローチから聞こえるその声は今にも消えそうだった。
それでも優しいその声はカイルに違いなかった。
―ありがとうセレニティ…ずっと愛してたよ―
そしてブローチも光の泡となって消えていく。
「カイル!!」
夜空の満月に吸い込まれていくように消えていく光を見上げることしか出来ない私は頬に涙を伝わせていた。
後ろからそっとまもちゃんが抱き締めてくれる。
振り向くと、何も話していないのに全て分かってくれているような瞳で私を優しく見つめてくれていた。
「うさ…」
「まもちゃん…!」
「これからは俺が、俺たちがずっと側にいるよ。」
隣には愛するまもちゃんが。その後ろには大好きな仲間たちが皆笑顔で私を見ていた。
「うん。ただいま!皆…!!」
.