13 解放
彩花さんは泣いていた。
その涙は真珠のように穢れのない涙で。
私は本当の彼女の心が苦しいほどの悲鳴を上げていることを悟る。
「彩花さんは、私たちが助ける!!」
差し出した手をしっかりと握ると、胸のクリスタルに祈りを込めた。
私の言葉に彩花さんは泣きながら頷いていた。
今までの彼女の辛さが伝わってきて私も気付いたら涙が溢れていた。
やっと、まもちゃんの大切な家族に会えた。
まもちゃんを笑顔にしてくれた大切なあなたに…
ルシファーはシルバームーンクリスタルの光に圧されて、彩花さんの体から離れて後ずさっていた。
「彩花、もう大丈夫だ。」
まもちゃんも私たちの手の上に右手を置いて彩花さんを見ると微笑む。
「まもるく…」
そして二つの光が涙で溢れた彩花さんを包んで、瞳を閉じて祈ると、彼女を支配していた暗黒のエナジーは光の洪水と共に浄化されていった。
そして元の姿に戻った彼女はふっと力が抜けてその場に倒れこむ。
私とまもちゃんよりも早く、駆け寄っていたウラヌスとネプチューンが彩花さんを抱きかかえる。
「彼女は私たちが地球に先に運ぶわ。ただの人にはこの空間の負のエネルギーは強すぎるから。」
「頼む。」
まもちゃんはネプチューンの言葉に頷く。
私もほっと安心したその時だった。
「殺してやる…!!」
背後から信じられない殺気を感じて振り返ると、ルシファーが彩花さん目掛けて攻撃を放っていた。
咄嗟にウラヌスとネプチューンは彩花さんを抱きかかえたまま避けたけれどルシファーの怒りは収まらない。
ヴィーナスたちが私たちの前に構えて立つ。
「早くウラヌス、ネプチューン!!今のうちに彩花さんを地球に!!」
ヴィーナスのその言葉にルシファーは大声で笑い始める。
「無駄だ!出口は閉ざした。お前たちはここで死ぬのだ!!」
「ルシファー!!彩花さんには手出しさせない!私たちが相手よ!」
私がルシファーに叫んだ時だった。突然苦しみだした彼を見て、マーズが一歩前に出る。
「まただわ。」
「マーズ?どういうこと?」
「見て。アイツの顔。」
険しい眼差しで指差すマーズの先を見ると、苦しみ悶えている奴の顔は全く別の人のものだった。
「アイツは…全く罪のない人間に宿ってる。さっきも同じように苦しんでいたの。その時…確かに彩花って呼んでいたわ。」
「え!?」
マーズの言葉に驚いていると、ウラヌスが会話を遮る。
「限界だ!彼女を連れて行く!」
「私が出口を突破します!」
プルートが言った時、不意に彩花さんの瞳が開く。
「え…?か…いと…?」
彼女は、苦しむルシファーの顔を見て確かにそう言った。
「は…やく…!!逃げろ彩花…!!」
それに気付いたのか彼はそう言って体中でルシファーを押さえ込んでいるようだった。
「海斗!!」
叫んだ後、激しく咳き込む。おそらくこの暗黒の空気がそうさせているのだ。
「もうこれ以上は無理だ彩花!」
まもちゃんの言葉にウラヌス達は目配せをする。そして私たちに合図のように頷くと、その場を去っていった。
ルシファーは…海斗という人間に宿っているの!?
じゃあ…私たちがルシファーを倒したら彼はどうなるの…!?
彩花さんたちがいなくなって私はまもちゃんと目を合わせると、彼もまた、同じように不安の色を浮かべていた。
だけどすぐに強い眼差しで私を見つめる。
大丈夫。
きっと、私たちは大丈夫。
自分を、自分たちを信じてあの悪に立ち向かえば、きっと海斗さんを救う事だって出来るはず。
そうよ。
この新しく生まれ変わったシルバームーンクリスタルと大切な皆と共に。
絶対にそうさせてみせるわ―――!!!
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