13 解放
月のプリンセスのクリスタルの輝きは、彼女だけが生み出しているものではないのね―――
第十三話
『解放』
私は、何も出来なかった。彼女たちの聖なる輝きを前にして。
私は一体何をしているのだろう。
自分の身を変えられてまで願った人はやはり手に入れることが出来ず、クリスタルはなくなり、力も跳ね返されてしまう。
でも、どうしてだろう。
もう戦うという気持ちさえ、沸いてこなかった。
セーラー戦士達は眩い光をルシファーに向けていた。
シルバームーンクリスタルは、月のプリンセスと、エンディミオン…そして二人を守る戦士たちの力が合わさって、こんなにも無限の輝きを得ることが出来るのだろう。
私たちはきっと、この温かな光を前にしたらどうしたって勝てないのだ。
あきらめのような、悟ったような。
覚悟にも似た気持ちでその光景を見ていた。
そこまで思ったとき、突然ルシファーがこちらに近づき、後ろから羽交い絞めにされる。
「ルシファー様…!何を!?」
「お前のような役立たずはここで私の代わりに果てるが良い!」
「彩花!!」
「彩花さん!!」
エンディミオンとセーラームーンが口々に叫ぶ。
やめてその名で呼ぶのは…!!
私はもう捨てたのよ。高嶋彩花というつまらない人生を。
こんな風にあなた達に同情されるくらいなら死んだほうがましよ…!
けれどセーラームーンは誰よりも必死な顔をして私のことを助けようと向かってくる。
どうして?どうしてあなたがそんな顔するのよ。
私は一度、あなたを死に追いやったのよ?
本当は誰よりも憎い相手じゃないの?
今私が死ねば、エンディミオンはあなたのモノじゃない。
あなたの勝ちじゃない!!
なのに…どうして―――!?
すぐ近くまで来ると、彼女は微笑んだ。
そしてそっと私に手を伸ばす。
その笑顔は私の頑なな心を溶かしていくようで。
強くて優しい、温かな光に抗うことが出来ず、頬が濡れるのを感じながら私は…
震えるその手を伸ばしていた。
本当はもう、分かっていた。
こんなことを続けていても彼を手に入れることなんて出来ないのだということを。
分かっていたの。
だから私は誰かに止めて欲しかった。
こんなに惨めで浅はかな自分を晒し続けるのを誰かに止めて欲しかった。
それは、ナタリアではなく、心のずっと奥で、彩花としての自分が思っていたこと。
その心が今、セーラームーンの光で洗い出されていく。
――たすけて――
たった一言、言葉にならないそれは、ずっとずっと言いたかった『私』の…
心の叫びだった。
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