10 交錯する想い
~南西・古の湖~
「はるか、死ぬことについて…考えたことはある?」
暗く何も生命を感じない湖を横にして、私の前を歩いているみちるは振り返らずに聞いてきた。
「あるよ。君に出会う前は何度もね。」
私の言葉に立ち止まってゆっくりとこちらに顔を向けてくる。
だけど何も言わない彼女は再び視線を私から逸らしてしまった。
「私、プリンセスを守り地球を守る使命を誇りに思っていたわ。でも、うさぎの死を目の前にして冷静さが微塵も無くなってしまった。
自分が死ぬことを考えているときですら淡々と受け止めていた私が…。」
「それは私も同じさ。ナタリアを助けようとする衛を理解できなかった。」
「ウラヌス…。」
「だけどあの揺るがない衛の意思を見て分かったよ。きっと衛は誰よりもうさぎを信じていて、誰よりも愛しているから全てを受け止めようとしているんだ。」
私は決して涙を流さないようにしていたプリンスの苦渋に満ちた表情を思い出していた。
「なんだか…悔しいわね。私達だって、前世から遠く離れてはいたけれどプリンセスのことをずっと想ってきたというのに。」
「確かに悔しいな。」
私達は苦笑いを浮かべると、真摯に見つめ合う。そしてみちるが口を開いた。
「シルバームーンクリスタルはナタリアと消える間際にあんなにもゴールデンクリスタルと共鳴していた。プリンスとプリンセスが二人で一つのように、二つのクリスタルはきっとどんなことがあっても同じところで輝くようになるわ。
こんなところに棲む暗黒に支配された奴等の好きには絶対させない。」
「そうだな。うん。ようやくみちるらしくなってきた。」
ニコリと笑う私に僅かに頬を膨らまして照れる彼女は再び前を向いてしまう。
私は彼女に近付いて背後から抱き寄せる。
「私もみちるの側が、一番安心して輝ける場所なんだ。」
「分かってるわはるか。…だって私も、同じだもの。」
穏やかに言うみちるの声は私の心に温かく広まった。
少し前の私達なら目的の為ならば手段を選ばずに、ナタリアを殺してでもシルバームーンクリスタルを取り返そうと思っただろう。
だけど優しくてお人好しなプリンセスとその仲間達。
そして強い揺るがない信念を持っているプリンス。
彼等に出会って変わったんだ。
私達は私達の新しいやりかたできっと二人を助けてみせる。
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