10 交錯する想い
第十話
『交錯する想い』
~帝国ルシフェル西・鉄の橋~
「レイちゃん、私達あの時も一緒だったね。」
「そうね。」
あの時――――
それはギャラクシアにこの身を滅ぼされた時のことだ。
皆まで言わなくてもその時の辛さは一瞬にして胸に広がる。
「今回の占いの結果は?」
歩くスピードは緩めることなく私はマーズに尋ねる。
マーズは歩みを止めるとそびえる帝国の城に鋭い眼差しを送りながら口を開いた。
「占ってないわ。」
「え?」
私も合わせて立ち止まる。
「逆に願を掛けてきたの。」
「願?」
「運命を自分たちで切り開けるようにって。占いの結果に今回ばかりは頼りたくなかったの。だけどそれって…セーラーマーズとして失格よね。」
少しだけ泣きそうな顔をして言うマーズに私は彼女の肩に額を寄せる。
「そんなことない…。大丈夫!レイちゃんが願掛けてきたなら私達は10万馬力よ!!」
「美奈…」
「絶対…うさぎを助け出せるから!」
ブイサインをマーズに向けて笑う。
「当たり前でしょ。」
少し怒ったような表情でそう返すマーズはそれでも瞳は優しく私を見つめていた。
~帝国ルシフェル東・楔の橋~
皆とバラバラに行動を始めて、後ろを歩いていた亜美ちゃんが不意に話しかけてきた。
「まこちゃん、私ね…時々この頭脳が、一番大切な時に何も役にたたないんじゃないかって思うことがあるの。」
「どうしたんだよ急に。」
「危険を予測することができても、色々なデータが揃わないと行動できない。今回も、それが結果としてうさぎちゃんをこういう目に遭わせてしまった。」
「違うだろ!?」
伏せがちな目で小さくなって見えるマーキュリーに私はその両肩をがしりと掴んで言う。
「うさぎを守れなかったのはマーキュリーだけのせいじゃない。私達皆の…」
「だけど!!衛さんにまず敵の存在を知らせなかったことだって判断ミスだったわ。そのことにもっと早く気付いてルナやアルテミスに言えれば良かったのに…私は、数値や敵の強大さばかりに気を取られて一番大事な人の気持ちとか…心を考えていなかったのよ!!」
マーキュリーの瞳には涙が溢れる。
「うさぎちゃん…ごめんなさい…ごめんね…!」
パシッ
頬を張られてマーキュリーはよろめいて驚いてこちらを見る。
もちろん本気で叩いたりはしなかったけれど、まさかここで平手打ちされるとは思っていなかっただろう彼女はふらついてしまったようだ。
「私達は誰のお陰でここまで来れたんだ?」
「…!」
マーキュリーは張られた頬を抑えながらはっと目を開く。
「マーキュリーが全力で、寝る暇もなく調べたからだろ!?」
そう。それは私がいくらやろうと思ったってできないことなんだ。
マーキュリーにしか、亜美ちゃんにしかできないことなんだよ。
確かに今までもルナやアルテミスもいたし、せつなさんだっている。
だけど
「私達の中で誰よりも早くうさぎと出会って、最初からその頭脳で色んな敵から私達を守ってくれていたのは、マーキュリー。亜美ちゃんなんだよ。」
「まこちゃん…」
私が微笑むと、亜美ちゃんは嬉しそうに「ありがとう」と小さく囁いた。
私は親指をクイと城に向けると強い意思を込めてマーキュリーに話し始める。
「ここまで来たんだ。何がなんでもうさぎを見付けてルシファーをぶっ潰すぞ!」
「ええ!」
私達は強く頷き合うと城に向かって一気に駆け出した。
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