9 心の隙間
「こんな…馬鹿なことが…!!」
セレニティとエンディミオンの聖石に阻まれて何もできずにここに帰ってくるなんて――――!!
セレニティのクリスタルは確かに私が手に入れたというのに。
それなのにゴールデンクリスタルと呼応するかのように輝いていた。私の力では収められない程のパワーで。
未だあの光のせいでぼんやりとした頭を振って瞳を開けると、この地底マグマとは別の、燃え盛る焔のようなオーラで鋭く私を見据える彼がいた。
「ナタリア。うさはどこにいる。」
この世界に来て暗黒エナジーを纏っているわけでもないのにこんなにもしっかりと意識を保っていられるとは驚いた。
これが地球の王子の聖なるオーラ?
素晴らしいわ衛くん。
私は高台にそびえ立つ城を指差す。
「セレニティならあの城の中よ。でももう手遅れじゃないかしら…?今頃はルシファー様との婚儀の準備が進められているはずよ。」
私はじっと彼を見つめる。暗黒の力でエンディミオンを支配するために。
だが…
「無駄だよ彩花。」
彼の瞳の色は変わらない。
「そんなはず…!!」
今度は手を振りかざして彼に向ける。しかしそれもあっという間にその差を縮められて手首を掴まれた。
「俺はもう何からも惑わされない。絶対に。」
言いながらも掴む手の力が強くなり、私は彼の揺るがない意思を目の当たりにして背筋が寒くなった。
彼は本気だ。
もし一つでも出方を間違えれば私も軽い傷では済まされないだろう。
力一杯彼の手を振りほどくと冷えきった眼差しを送る。
「好きなだけやってみればいいわ。それこそ、無駄だと思うけどね。」
この世界に彼が来たのならもうこっちのもの。
いくらでも足掻けばいいんだわ。
最後にはこの私が貴方の全てを手に入れるのだから―――――
私は彼の前から姿を消した。
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