8 消失~二つの光~

「ダメだ!!」

俺は彼女達に両手を広げて制した。自分達のプリンセスを失った悲しみ、ナタリアに対する怒りを灯した瞳が俺の行動を信じられないという色を付けて見つめていた。

「プリンスどいてください!!今攻撃しなければ地球は更に危険に瀕します!!」

プルートは自らのロッドをナタリアに向けながら叫んだ。

「ダメだ!」

「うさぎが奪われたのよ!?あなたはそれでも止めるの!?いくらプリンスでも聞けない!!」


ネプチューンは普段の冷静さはどこにもなく、悲痛な心の内をそのまま吐露する。




分かってる。うさは魂ごとやつに奪われた。

俺達の



俺の



大事なたった一人の愛する恋人を。




本当は立っているのもやっとの精神状態で。ともすれば怒りにかまけてナタリアに致命的な攻撃を放ってもおかしくはなかった。




だけど





だけど







「ナタリアは殺さない。」

その言葉に全員の動きが止まる。

「いとこだからっていう理由ならお前はもうここから消えろ!」

ウラヌスが大きく手を横に振って後退を指差した。



「うさがそう思ってるから。彩花を助けたいって…思ってるから。」

「うさぎさんが殺されたのにですか!?」

サターンが頬に涙を伝わせて言った言葉に打ちのめされそうになる。その事実は一面を闇に塗り替えることができるほどの響きがあった。




「そうだ。」




かろうじて出た言葉は掠れていて震えていた。視界の隅にはゴールデンクリスタルとシルバームーンクリスタルが共鳴して輝いている中に為す術のないナタリアが映った。



対に作られたかのような二つのクリスタルは互いの輝きを確かめ合うように聖なる光は膨脹と収縮を繰り返す。

ナタリアはその光から逃れようと己の体を地底帝国へと移動するために消そうとしていた。
俺はゆっくりとナタリアに近付く。



「彩花。俺を連れていけ。」

「衛さん!!」

ヴィーナスが呼び止めるが振り返らずに光の中にある闇の入り口へと歩を進める。

続こうとする彼女たちを止めるようにゴールデンクリスタルの力で光の壁を作った。



「地球を頼む。俺は、うさを…助ける。」



彼女の強くて優しい光は、こんなことではきっと消えたりなんてしないから。

だから俺は絶対に涙を流さない。




「ふざけるな!!一人で行かすか!!」

ウラヌスが壁をやぶろうと彼女のタリスマンを振りかざす。


「君達をこれ以上巻き込めないよ。彩花は俺の従姉だから。待っててくれ。必ずうさを連れ戻すから。」

「衛…!!」




刹那、ナタリアの消失に合わせて俺の体も地上の世界から消えて無くなった。













つづく
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