8 消失~二つの光~
「願いを叶えるクリスタル、シルバームーンクリスタルは私が。そして、月のプリンセスは地底帝国の王、ルシファー様にその身を捧げるのよ。魂となって永遠にね…。」
「馬鹿なことを言うな!!」
俺の言葉に冷たく微笑むだけでナタリアは尚も続ける。
「私はその為にルシファー様から力を授かったの。復活しきれないあの方には、魂の伴侶となる強い力を持った女性が必要だった。それが無限のパワーを持つ、その子。プリンスセレニティという訳よ。」
違う。本当はルシファーはシルバームーンクリスタルが欲しいだけだ。けれど自分ではまだ思い通りに動けないからナタリアを利用した。彼女の心を闇に塗り替えて…。
「うさぎちゃん!?うさぎちゃんの体が…!!」
マーキュリーがうさの元に駆け寄って青ざめる。
うさの体は透き通っていて、シルバームーンクリスタルの輝きが増す度に逆に消えかかっていた。
「うさ!」
俺はゴールデンクリスタルを解放して彼女のパワーの消失を抑えようとする。しかし、胸元の刻印がそれを邪魔して思うようにいかない。
「ルシファー様がお呼びよ。さあ、セレニティ。その身を我が主に捧げなさい!」
『プリンセスセレニティ…捕えたぞ…!!』
地面の底から響き渡るその声は俺たちの鼓膜と胸を恐ろしく震わせた。
突如地面から巨大な漆黒の闇のような手がうさに目掛けて伸びてくる。
その手のひらにはうさの胸元の印と同じものが刻まれていて、まるで吸い寄せるかのようにうさの体にそれをかざす。
そしてうさはあっという間に飲み込まれて見えなくなった。
巨大な手はそのまま地中に戻り地響きはやがて収まる。
「うさぎちゃん!!」
「プリンセス!!」
あまりに突然のことに俺達はなす術もなく、戦士たちは彼女のことを呼ぶ。しかし俺だけは何も言えなかった。
たった今まで腕の中にあった重みと温もりが跡形もなく消えてしまったのが信じられなくて。
まだ姿が全て見えない敵に一瞬にして奪われてしまったことを信じたくなくて。
しかしそれは現実であるということをナタリアの言葉によって嫌でも認めることになる。
「エンディミオン、これを見て。」
嘘だ
ナタリアの手にはずっとずっとうさが胸に光らせて、大切に優しく守っていたシルバームーンクリスタルがあった。
.