7 愛する人
「地底帝国のルシファー様から力を譲られた、このプリンセス・イヴル・ナタリアにその程度の力で刃向かうなんて…愚かね。」
そう言うと再びうさの事を見る。
「改めて、初めましてプリンセス・セレニティ。」
「あなたは…誰?」
うさはこれが彩花ではないことを悟ったようで、警戒しながら問う。
「私はね、本当ならエンディミオンと結婚するはずだった…あなたは知らないでしょうけど、王子の婚約者だったの。それをあなたが王子をたぶらかしたせいで月と地球で戦争が起こって、何の罪もない私もその時に死んだ。」
「あなたが…婚約者?」
冷たい眼差しを送るナタリアに目を見開いてセーラームーンは聞く。
そして俺のことをゆっくりと見てくる。
違う
そう言いたかったけれど、クンツァイトたちの話ではそれは真実だった。当の俺が知らなかっただけ。情けないがそれが事実だった。
「まもちゃん…本当…なんだね…?」
黙る俺に答えを導きだしたうさはか細い声で確認する。
「うさ、俺は…」
「ええ本当よ。だから…」
グイッ!
ナタリアはセーラームーンの顎を掴むと自分に引き寄せて冷笑する。
「ナタリアやめろ!!」
「彼を、私に返して?」
赤い目がカッと見開かれてうさを捕える。
「あ…やかさん…」
「セーラームーンから離れろ!!」
ウラヌスの声が響き渡る。
「ディープ・サブマージ!!」
「シャインスノーイリュージョン!!」
深海の技と、氷の攻撃はナタリアの性質上僅かに効いたようで、セーラームーンを掴んでいた手が離れた。
俺は彼女を抱き寄せるとナタリアから距離を取る。
「私の…せい?」
前世のことを思い、肩を小刻みに震わせるうさを引き寄せる。
「違う!!」
それは違う。あの戦争は君のせいではない。ナタリアが死んだのだって、セレニティのせいじゃない。
「そうよ!あなたのせいよ!!」
高笑いを響かせながら言うナタリアに堪らなくなって技を構える。
「だめだよまもちゃん!私が彩花さんを助けるから!!」
「うさ…」
ウラヌス達が次々に技を繰り出すなか、俺達の間は時が止まったように静かだった。
「エンディミオンの婚約者で…まもちゃんの初恋の彩花さんを…助けるから…!!」
初恋…?
どうしてうさがそんなことを…
「分かるよ」
絞り出す声で泣き笑いのような表情で話すうさに胸が締め付けられた。
「好きな人が考えていることくらい…分かるもん。彩花さんは、初めてまもちゃんを笑顔にしてくれた大切な人。そうでしょ?」
「うさ…」
「だから彩花さんを助けなくちゃ。」
俺でも気付いていなかった彩花への気持ちをうさは見抜いていたというのか…。
でも…
「初恋は彩花でも、初めて愛したのはうさこ…君だよ。」
「うん。分かってるよ…。」
寂しそうに笑う恋人に、心からの笑顔にできない今の自分が悲しくなった。
だけど信じて欲しい。
どんな時でも側にいて
命を懸けて守りたい人
誰よりも君の笑顔を大事にしたくて
俺の体も心も魂も
全てが必要としているのは君なのだと。
これからもずっとずっと愛しているのはうさ
君だけなのだと
溢れる言葉全てをすぐに伝えることはできなくて、俺はうさを抱き寄せると唇を重ねた。
つづく