Formidable enemy



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「ま、まもちゃん!」


店から逃げるよにうさの手を引いてしばらく歩いた所でうさが声をかけてきたが、恥ずかしくて何も言えない。

あんな真面目な顔をして、あんな恥ずかしい台詞を吐いて、穴があったら入りたいくらいだ。

こんな事をしてきっと小さいつまらない男だと思われたに違いない。

しかしやはり女々しい俺はうさの手を離すことは出来なかった。


「まもちゃん!」


「・・・」


先程より強めの口調で名前を呼ばれ、更にぐっと繋いでいた手を引っ張られた俺は、もう逃げられないと悟る。

覚悟を決めて振り向くと、まだ少し顔が赤いうさが不安そうにこちらを見ていた。

こんな顔をさせたかったわけじゃない。
久しぶりに会えたのに、俺は本当に最低だ。
とにかく、謝ろう。


「う」


「嫉妬?」


「え?」


「まもちゃん、嫉妬してた?」


「え・・・」


「嫉妬だよね?焼きもちやいちゃったんだよね?」


早口で捲し立てるうさに図星をつかれて顔に熱が一気に集まる。
確かに、嫉妬だ。間違いない。だが、面と向かって言われると恥ずかしくて仕方がなかった。


「ねぇー、まもちゃん!」


「っ、そうだよ!悪いか!」


しつこい問いかけにヤケクソ気味にそう答えると、うさは何故かとても嬉しそうに目を輝かせた。


「まーもちゃん!」


「なんだよ・・・」


そっと近づいてきたうさは、恥ずかしくて未だに顔を合わせられない俺をぎゅっと抱き締めた。
いきなりな出来事に何も反応出来ない。


「ごめんなさい。まもちゃん。でも、ね?嫉妬してくれて嬉しかったよ?」


「・・・カッコ悪いだけじゃないか・・・」


「そんな事ないよ?可愛かったよ?」


「男に可愛いってのは誉め言葉じゃない・・・」


「うん。でもね?嫉妬する必要なんてないんだよ?」


「・・・」


「確かに皆もまもちゃんと同じくらい大事だよ?比べる事なんかできない。でも、でもね?男の人の中ではまもちゃんが一番!だよ?それじゃぁ、ダメかなぁ?」


「ダメじゃない。」


女の子にここまで言わせて、しかも即答するなんて本当に俺は情けない。
でも、うさの言葉は心のモヤモヤとしたものを取り払うのには十分だった。
そして今度は自分から強く抱き締め返すと、耳元で小さく囁いた。


「ごめん。」


「うん!大好き!まもちゃん!」


「久しぶりの二人きりの時間だったから・・・」


「ごめんなさい。でもうさはまもちゃんのものだよ?勿論ここも!」


「!!!」


俺の手を自分の胸に押し当てた彼女は、本当に意味を理解しているんだろうか。
いや、多分あまり理解していないのだろう。
あまりの小悪魔っぷりに頭が痛くなるが、もはやそれを咎める理性も働かなかった。


「うん。じゃぁ、早く行こう。」


「え?何処に?」


「俺の家。」


そこまで言うと俺は再び彼女の手を取り、早歩きで自宅へと向かう。
後ろから「え?今日はお出かけじゃなかったのー?」と不満気な声が聞こえたが、俺は自宅まで我慢ができるのかどうかで頭が精一杯だった。









隣ですやすやと寝息を立てるうさの髪を撫でて、ベットから上半身を起こすと視界に散乱している俺とうさの服が目に入った。

結局、自宅に着くなり我慢の限界を向かえた俺はそのまま甘える様に彼女との甘い時間を過ごし今に至る。

全てを受け入れてくれる彼女の包容力に感謝しつつ、自分のとってしまった子供っぽい行動に反省をする。
皆にも悪い事をしてしまった。
盛大なため息をついたところで服の山でチカチカと光っている携帯に気が付いた。

寝ているうさを起こさないように体を動かし携帯を手に取ると一通のメールが届いていた。
大学のゼミの仲間だろうか?そう言えば今日連絡するって言っていた気がする。
何気なく開いたそのメールを確認して俺は再度、ベットに突っ伏す事になろうとは思いもしなかった。
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