或る夫婦の日常
※パラレル/夫婦設定/ちびうさ中学三年生
都内港区麻布十番にある閑静な住宅街。そこの一角にある家に、その夫婦は住んでいた。
食卓に並べられた、栄養も考えて作られた朝食。それらを目の前にしながら、その家の一人娘であるちびうさは思わず深い溜息を吐く。
「どうしたの?ちびうさ」
そう訊ねたのはちびうさの向かい側に座る、母親のうさぎ。とうに三十路を越えていながら、未だ二十代に見える若々しい容姿を持つが故に、外を出歩く時は必ずナンパされる事をちびうさは知っている。
「もしかして受験の事で悩んでるのか?」
次にそう訊ねたのは、父親の衛。この地場家の大黒柱である彼は、大学病院で優秀な外科医として働いていて…。そしてやはり彼もまた、もう四十路を迎えていながら若々しく、容姿端麗とあって勤め先に居る若い看護婦からはモテモテだ。
いつも若々しく素敵な両親。ちびうさを蔑ろにする様な事は決してしないし、いつも暖かく見守ってくれているのを知っている為、ちびうさにとって自慢の両親である事に変わりは無い。
だがしかし、そんな両親に対してちびうさも呆れる事がある訳で…。
「ママ、ちゃんと自分の椅子に座ったら?パパも自分のご飯は自分で食べなよ」
それが両親のバカップル並の仲の良さだった。
仲が良い事は悪い訳では無いのだが…。現に今、衛の膝の上にはうさぎが座っていて、そのうさぎは衛の口に朝食のデザートである、カットフルーツを混ぜたヨーグルトを食べさせようとしていた。
「「え?何で?」」
結婚して十五年以上も経っていながら、うさぎと衛はいつだって新婚気分。最早くっ付いているのは当たり前で、ちびうさの言葉に二人は首を傾げる。
何でじゃねぇよ、とちびうさは思わず乱暴な口調でそう言いそうになったが、それをグッと堪えて…。再び呆れた様子で溜息を吐いた。
うさぎと衛の仲の良さは近所でも有名だ。何処に居ようとも二人だけの世界を作り上げ、唇を重ね合うのは日常茶飯事。もう少しは慎みを持って欲しい、とちびうさはそう思いながら椅子から立って学校の鞄を持つ。
「仲良しなのはいいけど、もう少し周りの目を気にしてちょーだい!…じゃ、私は学校に行くから」
ちびうさは最後にそう言うと、お弁当もちゃんと持って学校へと行ってしまい…。残されたうさぎと衛は、互いに顔を見合わせる。
「どうしたのかしら?あの子」
「んー…。まぁ、ちびうさも思春期だからなぁ…」
それもそうか、とうさぎは衛の言葉に納得した様に頷いて…。衛の首に腕を回すと、軽く触れる程度のキスを贈った。
まだ恋人の頃の様な愛らしい笑みを浮かべるうさぎに、衛は蕩ける程の甘い微笑を向けて…。互いに顔を近付かせれば、そこからは啄む様な口付けが始まる。
今日は仕事も休みだし、このまま…。衛はそんな思惑を胸に、うさぎの着ていた衣服の中へ手を入れようとしたのだが、その手はゆっくりとうさぎの手によって外された。
「え?嫌だった?」
「もう、嫌な訳ないじゃない。解ってる癖に…。でも私は家事があるから、それが終わるまで待ってて」
「なら、俺も手伝うよ」
自分も手伝えばその分早く終わる。そうすればその後は、思う存分ベッドの中で愛し合える訳で…。勿論、そんな理由もあるのだが、衛はうさぎが普段どれだけ頑張って家事を熟しているか解っている為、少しでも彼女の力になりたいからこそ、そう提案したのだ。
だが衛がうさぎの事をよく理解している様に、うさぎもまた衛をよく理解している訳で…。日頃医者として激務に追われている衛を少しでも休ませたくて、うさぎは衛の提案に苦笑しながら首を横に振る。
「大丈夫よ、まもちゃんはゆっくり休んでて…。最近ずっと働き詰めだったんだもん。ちゃんと体を休めなきゃ…」
「有難う、うさ…。愛してる」
「うん…。私も愛してるわ、まもちゃん…」
一度唇を重ねて微笑み合う二人の間には、いつだって甘い雰囲気が流れている。その雰囲気はちびうさ曰く、イチゴ牛乳にあんこを投入するぐらいに甘ったるい雰囲気な訳で、それまでずっと大人しく餌を食べていた飼い猫のルナは、うんざりした表情で二人を見ていた。
それから時刻は過ぎ、昼と夕方の間の時間帯。うさぎは衛と一緒に買い物へ出掛けていたのだが、美男美女である事は勿論の事、その二人の仲の良さに行き交う人々は思わず視線が奪われてしまう。
季節は既に夏であり、太陽の強い陽射しが地上を暑く照らしている。それにも関わらず衛の腕はうさぎの腰へ、うさぎの腕も衛の腰へと回されていて、ぴったりくっ付きながら歩いているのだ。
都内港区麻布十番にある閑静な住宅街。そこの一角にある家に、その夫婦は住んでいた。
食卓に並べられた、栄養も考えて作られた朝食。それらを目の前にしながら、その家の一人娘であるちびうさは思わず深い溜息を吐く。
「どうしたの?ちびうさ」
そう訊ねたのはちびうさの向かい側に座る、母親のうさぎ。とうに三十路を越えていながら、未だ二十代に見える若々しい容姿を持つが故に、外を出歩く時は必ずナンパされる事をちびうさは知っている。
「もしかして受験の事で悩んでるのか?」
次にそう訊ねたのは、父親の衛。この地場家の大黒柱である彼は、大学病院で優秀な外科医として働いていて…。そしてやはり彼もまた、もう四十路を迎えていながら若々しく、容姿端麗とあって勤め先に居る若い看護婦からはモテモテだ。
いつも若々しく素敵な両親。ちびうさを蔑ろにする様な事は決してしないし、いつも暖かく見守ってくれているのを知っている為、ちびうさにとって自慢の両親である事に変わりは無い。
だがしかし、そんな両親に対してちびうさも呆れる事がある訳で…。
「ママ、ちゃんと自分の椅子に座ったら?パパも自分のご飯は自分で食べなよ」
それが両親のバカップル並の仲の良さだった。
仲が良い事は悪い訳では無いのだが…。現に今、衛の膝の上にはうさぎが座っていて、そのうさぎは衛の口に朝食のデザートである、カットフルーツを混ぜたヨーグルトを食べさせようとしていた。
「「え?何で?」」
結婚して十五年以上も経っていながら、うさぎと衛はいつだって新婚気分。最早くっ付いているのは当たり前で、ちびうさの言葉に二人は首を傾げる。
何でじゃねぇよ、とちびうさは思わず乱暴な口調でそう言いそうになったが、それをグッと堪えて…。再び呆れた様子で溜息を吐いた。
うさぎと衛の仲の良さは近所でも有名だ。何処に居ようとも二人だけの世界を作り上げ、唇を重ね合うのは日常茶飯事。もう少しは慎みを持って欲しい、とちびうさはそう思いながら椅子から立って学校の鞄を持つ。
「仲良しなのはいいけど、もう少し周りの目を気にしてちょーだい!…じゃ、私は学校に行くから」
ちびうさは最後にそう言うと、お弁当もちゃんと持って学校へと行ってしまい…。残されたうさぎと衛は、互いに顔を見合わせる。
「どうしたのかしら?あの子」
「んー…。まぁ、ちびうさも思春期だからなぁ…」
それもそうか、とうさぎは衛の言葉に納得した様に頷いて…。衛の首に腕を回すと、軽く触れる程度のキスを贈った。
まだ恋人の頃の様な愛らしい笑みを浮かべるうさぎに、衛は蕩ける程の甘い微笑を向けて…。互いに顔を近付かせれば、そこからは啄む様な口付けが始まる。
今日は仕事も休みだし、このまま…。衛はそんな思惑を胸に、うさぎの着ていた衣服の中へ手を入れようとしたのだが、その手はゆっくりとうさぎの手によって外された。
「え?嫌だった?」
「もう、嫌な訳ないじゃない。解ってる癖に…。でも私は家事があるから、それが終わるまで待ってて」
「なら、俺も手伝うよ」
自分も手伝えばその分早く終わる。そうすればその後は、思う存分ベッドの中で愛し合える訳で…。勿論、そんな理由もあるのだが、衛はうさぎが普段どれだけ頑張って家事を熟しているか解っている為、少しでも彼女の力になりたいからこそ、そう提案したのだ。
だが衛がうさぎの事をよく理解している様に、うさぎもまた衛をよく理解している訳で…。日頃医者として激務に追われている衛を少しでも休ませたくて、うさぎは衛の提案に苦笑しながら首を横に振る。
「大丈夫よ、まもちゃんはゆっくり休んでて…。最近ずっと働き詰めだったんだもん。ちゃんと体を休めなきゃ…」
「有難う、うさ…。愛してる」
「うん…。私も愛してるわ、まもちゃん…」
一度唇を重ねて微笑み合う二人の間には、いつだって甘い雰囲気が流れている。その雰囲気はちびうさ曰く、イチゴ牛乳にあんこを投入するぐらいに甘ったるい雰囲気な訳で、それまでずっと大人しく餌を食べていた飼い猫のルナは、うんざりした表情で二人を見ていた。
それから時刻は過ぎ、昼と夕方の間の時間帯。うさぎは衛と一緒に買い物へ出掛けていたのだが、美男美女である事は勿論の事、その二人の仲の良さに行き交う人々は思わず視線が奪われてしまう。
季節は既に夏であり、太陽の強い陽射しが地上を暑く照らしている。それにも関わらず衛の腕はうさぎの腰へ、うさぎの腕も衛の腰へと回されていて、ぴったりくっ付きながら歩いているのだ。