Formidable enemy



女の子の友情は脆いものだ。
そんな事、誰が初めに言いだしたのか。

きっと、恋人が友達と仲が良いのを恨んで男が当て付けにそんな作り話を作ったんじゃないんだろうか。
そんな事を考えて冷めてしまったコーヒーを口に運ぶ。
正に今、恋人を女友達に取られてしまっている俺はそんな下らないことを思っていた。


「だからね、うさぎはこっちのが似合うわよ!」


「えー、そうかなぁ?」


「あ、これも可愛くない?」


かれこれ一時間ほど恋人とその女友達は、飽きることなく喋り続けている。
これが、噂のガールズトークというものなのか。
恋愛の話をしていたかと思えば洋服の話になってみたり。忙しいことこの上ない。
よく話題に困らないなと関心するくらいだ。
別に恋人に仲の良い女友達がいるのは別にいい。
寧ろ、俺が構ってやれないときなんかは有難い存在だ。
だが、それは時と場合による。
今日は久しぶりに二人きりで過ごすつもりだったのだ。
とりあえず今日の予定をお茶でもしながら話すつもりだったのに。

女々しい事は百も承知だが、何故こんなにも自然に集まってくるんだ。
もしや、みんなうさうさレーダーでももっているんじゃなかろうか。
それほどまでに彼女達の絆は半端ない気がする。
考えてみれば、前世の時の密会の時もいつも、いつも誰かしらに見つかっていた。
やはり、皆うさうさレーダーを!!
そんなバカな事を真剣に考えている俺の目の前で、まこちゃんがうさの顔を見てあっ!と声を上げた。


「あ、うさぎちゃん、口にクリームついてるよ?」


「え?どこどこ?とってー!!」


「仕方ないなぁ。ほら!」


頬っぺたに付いたクリームをまこちゃんが指で拭ってあげている。

俺だって今日まだ、一度も触れていないのに。
いや、女の子に嫉妬してどうする。
本当に俺は余裕がない。


「うさぎ、苺好きよね?アタシの一個あげるわ。」


「本当!!??ありがとレイちゃん!あーん!」


「全く自分で食べなさいよ・・・」


呆れた様子のレイちゃんだが、言葉とは裏腹にフォークに刺した苺をうさの口元に運ぶ。

女の子の同士ではこれも良くあることだ。
そう、良くあることなんだから気にするな、俺。


「あら、うさぎちゃん!ニキビできてるわよ!?」


「そうなのー!オデコに一個だけ。」


「この薬を塗るといいのよ?ちょっと失礼して・・・はい。これでよし!あとは暴飲暴食はダメよ?そして規則正しい生活を心掛けてね?」


「さっすが亜美ちゃん!お医者さん目指してる人は薬も持ち歩いてるんだねぇ!ありがとね!」


いや、医者を目指してても薬は普通持ち歩かないだろ。だが、俺もこれからも持ち歩いておこう。

そして亜美ちゃん、然り気無く触れたな。。。


「ねー!うさぎ最近おっぱいおっきくなった!?」


「えへへっー!わかるぅ?美奈Pより大きい自信あるよ!」


「いや、盛ってるんでしょ!ちょっと触らせて!」


一瞬自分の耳を疑った。


『ちょっと触らせて!』


いや、女の子同士なんだから何の問題もない。

まこちゃんが、クリームをとって上げたのも、レイちゃんがフォークで食べさせて上げたのも、亜美ちゃんが薬を塗ってあげたのも、美奈が胸を触るのも何も問題ない。


頭ではそう理解していたはずなのに。


「そこは俺のだから。」


気が付くと俺は美奈の手を取り、真面目な顔をしてそんなカッコ悪い台詞を吐いていた。


「ま、まもちゃん・・・」


名前を呼ばれてうさの顔を見るとこれ以上にないくらい赤面していて、自分が物凄い台詞を言ってしまったのだとそこで初めて理解した。


「えっ!あ、いや、これは違うんだ!」


慌てふためく俺。

これ以上無いくらい赤面するうさ。

ポカンとした表情の四人。


「わ、悪いけど今日はこれで!!!」


変な空気に耐えられなくなった俺は、うさの手をとって逃げるようにその場を後にしたのだった。
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