まもセレ
「変わった形のお城ね…。」
「ああ、これはお城じゃなくてマンション。たくさんの人がそれぞれの部屋を持って住んでるんだ」
見上げて目を丸くして俺の住むマンションを見て言う彼女の様子が、懐かしくて。
あの頃の君はそうやって初めて見るものを好奇心一杯に見つめて色々と聞いてきた。そしてそれに答えると―――
「マンション!?なんだか楽しそうね。」
ほら。そうやって瞳をキラキラさせて笑うんだ。
さっきまでの警戒心を微塵も感じさせない笑顔を向けてくる彼女に微笑み返すと、本当に、あの頃に戻ってしまったような気すらする。
でも
何故セレニティがここに、この場所に、この時代に来てしまったのか。
それが分からず、実際彼女と接触し続けていいものかという事も俺だけでは判断が出来なかった。
だけど今の俺の前に現れたのは、きっと何らかの理由があるはずで。
今はとにかく冷え切っているだろう体と、まだ少しぼんやりしているだろう頭の中を落ち着かせてあげることが最優先だろう。
エレベーターのボタンを操作する俺を横から興味津々に覗き込む彼女に苦笑しながらそんなことを思った。
彼女を部屋に入れるとリビングのエアコンをすぐに付けて暖を取る。やはり物珍しいのか彼女は部屋の中をきょろきょろと見回していた。
ブランケットを取りに自室に戻り持って行くと「きゃあ!!」と悲鳴が聞こえて駆け寄る。
「どうした!?…って」
「すごいわ!!この中に小さい人たちが住んでるの!!??」
立ち上がって興奮しているセレニティの手にはテレビのリモコン。好奇心の塊の彼女のことだ。きっとボタンを押してみたのだろう。画面には深夜のバラエティー番組が映されていた。
「それにあの長細い箱からは温かい風が吹いてくるし、外にもあったけれど火でもないのに光を照らしてくるあの天井にあるものは何!?」
エアコンと電気を指差して言ってくる彼女に思わず吹き出す。
「あ…私、変なこと言ったかしら…」
「いや、可愛いなと思っただけだよ。」
今夜は長い夜になりそうだな。
真っ赤になって黙ってしまったセレニティにブランケットを手渡した。