エンうさ

真っ赤になって慌て始めるエンディミオンが可愛くて。つい笑ってしまう。

エンディミオンが可愛いだなんて、セレニティのころは思わなかったはず。

あのころの私は彼のことを素敵で、誰よりも強くて、思慮深くて、優しくて、大人だと思っていたから。

でもまだ16、17歳くらいの、今で言えば高校生くらいの男の子なんだ。ううん、男の子ってほど子供じゃないけど、まだまだ大人でもない。

「セレニティのどんなところ…考えたこと、無かったな。」

まだ少しだけ赤い頬をかきながら言う彼。

「え!?そうなの?」

「ああ。だって…気付いたらもう、後に戻れないくらい好きになっていたから。」

「…!」

ふっと弱々しく微笑んだエンディミオンに胸が高鳴り、同時に締め付けられた。

人を、誰かを。本当に好きになるときの気持ちはきっと同じなの。理由なんてない。気付いたらどうしようもないくらい、好きになってるの。

あのころの私もそうだった――――



「多分きっと、こんな風に思える人にはもうこの先ずっと現れないと思う。」

きっぱりと言い切るその姿は、幸せそうなのに哀しげで。気付けば私は彼の手を両手でぎゅっと握っていた。

「エンディミオン、憶えてて?セレニティもあなたのことを、すごく、すっごくすっっごく大好きだから。それだけは…忘れないで…?」

他にも言いたいことはたくさんあるけれど、いくら馬鹿な私でも歴史の先を伝えてしまうほど馬鹿じゃない。本当は伝えたくて伝えたくて堪らなかったけれど。

だからせめて。あのころの私の気持ちを知っていて欲しい。憶えていて欲しい。

必死で、全力で、何よりも何よりも…あなたを愛していたのだということを。

「…うん。ありがとう…」

抱き締められる。その温もりはかつて何度も何度も味わった優しい熱だった。



その時、月が真っ白く強い光を放って私を照らした。

私の体もふわりと浮かぶ。

きっと、セレニティも、月の光に導かれたその先で、自分のありのままの気持ちを穏やかに受け止めることができたんだろう。まもちゃんと、一緒に。

不思議だけれど、なんとなくそれが分かるの。

だって私の胸の中もポッと明かりが灯ったみたいに温かくなったから。

「君の、名前は…?」

「私は…うさぎ。もう行かないといけないみたい。会えてよかったわ。さようなら、エンディミオン。」

最後に名前を告げると、宙に浮かぶ私を見上げる彼の額にキスを落とした。

瞳を潤ませている彼の中に私が映る。

私が泣くのは貴方の前から去ってから。今涙を流しては駄目。だから、笑顔で…


「またね。『    』―――」




さようなら、私の愛した人。



時を越えてもずっと、愛しているあなた。











おわり
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