エンうさ
「ねえ、あなたの大事なものって…何?」
「大事なもの…?」
月の光を受けたその湖面に屈んで手を浸して彼女は俺のことは見ずに尋ねた。
その手が作った波紋が映っていた月を揺らす。
「国や、使命?それとも…もっと別のもの?」
「国や使命が大事なものであるのは間違いない。でも俺は…」
湖面の月が緩い波紋で完全に消えたころ。俺は一呼吸置いて告げる。
「この、想い。セレニティに対するこの想いが…とても大事だ。
俺自身の生きる力になっているくらいに。」
「そう…そうね。セレニティも…きっとそうよ。」
今度は本物の月を見ながら彼女は少し声を震わせながらもしっかりと言った。
彼女が言うのならセレニティもきっと、そうなのだろう。
「ねえ!」
「え?」
立ち上がった彼女は俺のことをその空色の瞳で見つめると頬を染めながらセレニティと同じ笑顔で言った。
「あなたは、セレニティのどんなところが好きなの?」
「ええ!?」