エンうさ
間近で見て漸く気付いた違和感。
俺は彼女であって彼女ではないその存在になんと言えばいいか分からずにいた。
けれど与えられる温もりや安心感はセレニティと同じもので。何も聞くなという彼女の言葉に甘えて湧き上がる疑問も飲み込んでしまった。
「少し…歩かない?」
「あ、ああ。」
頬を伝う涙を拭って言う彼女の表情は笑顔だった。俺の知っている、まだあどけなさの残る可憐なものとは僅かに違い、どこか大人びた柔らかな笑顔。
泣きたくなった。
俺がこの先、おそらく見ることが出来ない成長したセレニティの姿を彼女に重ねてしまったから。
ずっと一緒にいたいと願いながらも覚悟していた。おそらくあと数年もしないうちに俺達には別れが訪れるであろうと。
先に歩いていた彼女が笑顔のまま振り返る。それが驚きの表情に変わろうとした頃、俺は彼女のことを再び抱き締めていた。
額の三日月の印はない。髪の色も違う。
けれど、『君』だ。分かるよ、それだけは。
「俺に…会いにきてくれたの?」
少し先か、それとも気が遠くなるほど先の、未来からか。それがどちらなのかもなんとなく分かる。
「…え?」
「ごめん、今は、見ないでくれ…」
流れたものを見られたくなくてそう言った。
声も掠れて震えているから、きっと気付かれてしまっただろう。それでも何も言わないでくれた彼女。そのまま俺の背に手を回して、まるで母親が子をあやすように優しく撫でる。
彼女の温もり、彼女の存在に救われる思い。けれどそれとは別の思いも湧き上がる。
俺はやはり覚悟しなければならないんだ。
最愛の人との、決別の時を―――――