エンうさ
今夜はもう、来ないのかもしれない。
俺は、馬鹿だな。昨日も会ったばかりじゃないか。毎日会えるわけじゃないのに毎晩こうしてこの場所に来て月を見上げている。
明日もここに来ると約束はしてくれたけれど、彼女だって一国の王女。しかも禁忌を犯して地球に降り立つのはそう毎日とはいかない。
実際来られない日も多くあったし、そんな時は日付が変わる頃には俺も城へと戻っていた。後ろ髪引かれながらも、今日は駄目でもまたきっと明日は会えると言い聞かせて。
今夜ももうじき日付が変わる。
戻らなくてはならない時間。
だけど、会いたい。会って大好きな笑顔を見たい。
―セレニティ…―
諦めきれなくて心の中で彼女を呼び、月を見る。
待つことしかできないこの身がもどかしい。
本当はずっと君と一緒にいたい。離したくない。君の全てを俺に預けて欲しい。
だけど。そんな我儘は言わない。
言わないからせめて。今夜も一時だけ彼女との時間を俺に下さい。
祈り。願い。勝手で愚かなその思いが届いたのだろうか。
月から美しい一筋の光が、俺の下へと降り注いできた。