エンうさ
目を覚ますとそこは、見覚えのある部屋だった。でも『今の私』の部屋ではない。
眠る前、窓から差し込む光に空を見れば、まるで呼ばれているのではと思ってしまうほどの綺麗なまんまあるいお月様がそこにあって。
暫く見惚れていた私は結局そのまま窓際で眠ってしまったんだ。ルナの風邪引くわよっ!なんていう声を意識の遠くで聞きながら。
「ここは…月…」
部屋にあるバルコニーに出て確信する。セレニティだった頃の私がいつも見下ろしていた光景がそこにあった。シルバー・ミレニアム。月の都が広がり、そしてその先の黒いヴェールのような空に無数に輝く満天の星々。その中で一際目立つ星。それはまるで青い水晶玉のような姿でこちらを向いている。
地球。
あの人の星。
夢を見ているのかな。そうよね、これは、夢。そう思ったのに…
部屋の鏡に映る自分の姿に驚いた。
前世の夢を見ているのだから当然セレニティの姿かと思っていたのに。そこには『月野うさぎ』の私がいたから。
「え、なになにどーしよう…って、いったあっ!」
試しに頬を思いっきり抓ると、それに相応しい痛みが走って涙目になる。
「夢じゃ、ない?」
どーしよう…どーしたら…!!
ヴィーナスたちに会って事情を話す?でも、上手く説明なんてできないよ。セレニティにそっくりだから信じてもらえるかもしれないけど、じゃあどうしてこの時代に来たのかなんて…うまく説明できる自信も無い。だって私も分かんないし、嘘付くのへただし…っ
混乱だらけのその時。
―セレニティ…―
「え…!?」
呼ばれた気がして外を見る。そこには相変わらず美しく浮かぶ蒼い星。
「エンディミオン…?」
行かなくちゃ…!
そう思ったのは殆んど反射だった。もしかしたらこの時代の私、セレニティがもうあの星に行っているのかもしれないだとか、前世の人々に関わるのはダメかもしれないだとか。そんな考えはこの時の私には頭に無くて。
彼の、エンディミオンの寂しそうで切なそうな声に呼ばれるまま、地球に繋がるゲートまで走っていった。