猫の日(クン美奈+アル)

 僕、司令室行ってくるっ! と一人になりたかったのだろうアルテミスがいなくなったあと。
 さっきまで乗っていた賢人の膝には美奈子の頭があった。下からムッとした顔で睨まれても涼しい顔を崩さない彼は、美奈子が作ってくれたアイスレモンティーが飲みたかったが…こんな風に甘えられるのもやぶさかではない為何も言わない。

「賢人って猫、好きよね?」
「嫌いじゃない」
「ふーん? まあ、アルテミスと仲がいいのはあたしも嬉しいけど」
「なんだ? アルテミスに妬いてるのか?」
 にっと笑って見下ろされるとバカじゃないの?!と反射的に言葉が飛び出して怒りだす美奈子。
 膝から起き上がって座り直し、ローテーブルに置いたままになっていたグラスに汗をかいたアイスレモンティーをごくごくと一気に煽った。
 
 そんな分かりやすい恋人に目を細めて笑う賢人は背後からそっと美奈子を抱き寄せ首筋に唇を寄せる。
「んっ、な、なによ…っ!」
「猫にはこういう事はしない」
 顎を持ち上げて射抜くように見つめながらも声は普段よりもずっと柔らかくて。突然の展開に美奈子は何も言えずに彼の唇を今度は唇で受け止めた。
 
 長く、深いキスは甘やかな気持ちにさせるには充分なのに、賢人の瞳にはもっと欲しいと何かの炎が灯ったように見えて、それに溶かされるように美奈子の体の力は抜けていく。

「……こういう事も、俺は美奈子としかしない」
「け、んと…」

 いいか? ほとんど唇が動いただけで声にならない問い掛けが美奈子の頭の中に注がれる。悔しいけれど賢人が自分を求めてくれることが嬉しくて、彼の腕の中で小さく頷くのが今できる精一杯だった。

 

おわり
2025.2.23
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