瞳の中の星(ネフまこ)


「まこと!」

ただいまもお邪魔しますも無く合鍵を開けた晃はそのままリビングにいるだろう恋人に向かって一直線に進んでいった。

「わっ晃!?今日は来るなんて言って無かったじゃ…

「ごめん!俺、間違ってたか!?」

「へ??」

両肩をがっしり掴まれて唐突に聞かれる質問にまことは目を点にさせて固まる。その手にはクリスマスツリーのオーナメントがぶら下がっていた。それに気付いた晃は初めて部屋を見る。

部屋の一角には立派なクリスマスツリーが置かれていて床には色とりどりのオーナメントがあった。これだけ大きなツリーに気付かないほどまことしか見ていなかった事実に晃は自身を振り返って少しの冷静さを取り戻す。

「まこと…俺、まことにはいつも芯から笑っていて欲しい。だからクリスマスも何をしたらまことが最高の時間を過ごせるかって考えてた。でも、まことはもしかしたらそんなでかいことしなくても良いって思ってるんじゃないかって…。そうなら俺にちゃんと言ってくれ。
うさぎちゃんからじゃなくて、俺はまことからちゃんとまことの本心が聞きたい。」

「うさぎに…聞いたのか。」

ふっと力が緩んだように微笑んだまことは晃の逸らすことのない瞳をしっかりと見つめ返した。

「晃、一緒にツリー飾ろう?」

「まこと、話を…

「私、晃と一緒に飾りたい。」

そして銀色の装飾の施された白いボール型のオーナメントを晃に差し出した。

「分かった…」

大きなツリーもこの長身の恋人が並ぶと小さく見えて。まことはその様子を見て笑った。

晃は初め、まことが自分の問いに答えないもどかしさを抱えていたのだが。一緒に飾りたいと言った時の彼女の表情がどこか切実で、それでもツリーが美しく仕上がっていくうちに彼女の表情も柔らかく幸せそうに変化して見えたから。
これが彼女の答えの一つなのだと気付くのだった。

てっぺんの星を除けば全ての飾りを付け終わったツリーを見てまことは瞳をきらと光らせて微笑む。

「やっぱり二人でやると早いな。両親が亡くなってからはずっと一人で飾ってたから。でも、別に寂しくなかったんだ。クリスマスって、ただクリスマスってだけでわくわくするもんだろ?だからどんどん自分の手で綺麗になっていくツリーを見てたらそれだけで嬉しかった。」

晃は何も言わずに恋人の横顔を見つめ続ける。

「でもさ…晃と一緒に何かすると今までの嬉しかったことが全部強がりの中でそう思い込んでいたものだったんじゃないかって思ってしまうくらい…ほんっっとーーにうれしくってさ。
だから、晃は…すごいよ。
こんな風に思える奴が私の隣にいてくれる。
それって…それだけで、私には夢みたいに幸せなことなんだ。」

晃のことを見て笑うまこと。ツリーの電飾の光を受けた瞳はキラキラと輝いていて。そこから流れる雫も流れ星のように綺麗で。

そんな彼女に手を伸ばした晃はたった一つの星を逃さぬよう、己の体に縫いとめた。

「俺がすごいんじゃねえよ。俺みたいな奴をそんな風に大切に思ってくれるまことの心が、馬鹿な男を世界一幸せな野郎にしてるんだ。
すごいのは、まことだ。」

彼の声もまた、掠れていた。

まことは涙に混ざった声で返事をし、抱えきれない大きな星を力いっぱい抱き締める。

「ねえ、てっぺんの星は、一緒に飾ってもいい?」

「もちろん。」

金色の大きな星は、昔は彼女一人では届かなくて両親に抱きかかえられながら一緒に付けていた。今は、彼女にとって特別な相手とそれができる。

今も、昔も。その星を飾るのは特別な意味を持っていた。

一人で飾っていたときは、いつか大切だと思える人とこれを付ける事が出来たらと思っていた。小さくて、でも彼女を支え続けた大切な願い。


一緒に星を持ち、微笑み合う。

ツリーにそれが付けられたとき、まことは思った。

「今まで見た中で一番綺麗に飾れた……」

そいつは良かったと答える晃に胸の中が温かくなる。



ツリーを見つめる瞳は隣の恋人へ。

金色の星を持っていた手は互いの手へ。

そして、唇は。










おわり
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