瞳の中の星(ネフまこ)
「あれ?晃さんだ!」
「ん?ああ、ほんとだ。」
家族連れやカップルで賑わうショッピングモールでうさぎと衛は誰よりも長身な男に目をやった。そして大きな声でうさぎがその男を呼ぶと、勿論彼も気付いて手を振りにっかりと笑って近付いてくる。
「それ、まこちゃんへのクリスマスプレゼントですか?」
両手にたくさんの紙袋をぶら下げてそれを軽く持ち上げると晃は上機嫌に笑った。
「ご名答!さっすがうさぎちゃん!」
「えへへ~♪」
「晃、張り切ってるな。」
「当たり前だ!なんて言ったって俺とまことの『記念すべき初クリスマス』だからな!」
晃の中でそのフレーズはほぼ定着しているらしい。
「いいなあ!彼氏がこんなにイベント張り切ってくれるなんて、まこちゃんも幸せだ~!」
「いやーうさぎちゃん!嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!」
ばしばしと肩を叩かれ目を白黒させるうさぎに衛は慌て、「お前浮かれすぎ。ちょっとは加減しろ!」と晃を軽く睨んだ。
あーごめんごめん!と楽しそうに謝る晃にうさぎも笑って大丈夫と答えるが、衛だけは若干眉間に皺を寄せたままだった。衛としては、大切な彼女に対してフランクすぎる振る舞いの晃に腹を立てたこともある。
しかしそれ以上に、衛自身も行動や表情からは伝わりにくいだけでうさぎとのクリスマスや誕生日などイベント事は毎回楽しみにしていて、プレゼント選びもうさぎの最高の笑顔が見たくて常に余念が無いはずなのにという思いがあるからだ。
晃が分かりやす過ぎるんだと、猪突猛進・愛情一直線タイプの友人を溜め息を付いて見やった。
そんな時。うさぎが思い出したように顔を上げて話し始めた。
「でもまこちゃんたら言ってたんですよ?」
「何を?」
「昨日、皆でお茶した時にクリスマスは恋人とどう過ごしたいかって話になって―――」
美奈子はショッピングに連れ回してボーリングしてカラオケしてチキンとケーキを食べて…と普段なら賢人が決して首を縦に振らないようなデートコースを揚々と話し、亜美はプラネタリウムで星のお勉強をしてから実際本物を二人だけで見に行きたいと真っ赤にしながら語り、レイはうちは神道ですから。と瑛二が聞いたら本気で泣きそうな台詞で一刀両断し、うさぎはどこか夜景が素敵に見えるレストランでドレスアップしてお姫様みたいなクリスマスを衛と過ごしたいとベタだが晃と近いような要望を声も高々に話したという。
そんな中まことは…
「何もしなくていいんだって。いつもと一緒でいいんだって言ってたんです!」
「え、そうなのか?」
晃の顔から笑みが消え、何か考え込むように目線を下ろして顎に手を当てた。
「晃、まこちゃんは多分…」
「ありがとな!ちょっとまことと話してくる!」
衛が言い掛けた言葉も遮って晃は雑踏の中へとあっという間に消えていく。
「どうしようまもちゃん、私余計なこと言ったかなあ…」
「いや、あの二人なら大丈夫だと思うよ。」
衛は晃の真剣な瞳を思い出してそう言い、恋人の頭をぽんと叩いた。