緩やかに(クン美奈)
戦士としての戦いの日々と、日ごろ運動部で鍛えている体力の持ち主である彼女の後を正攻法で追うには時間が空きすぎてしまっていた。
携帯を取り出して着歴の一番上にある彼女の名前を呼び出すと、たっぷり10コール目で漸く繋がった。
「おい美奈子「ただいま無神経男からの電話に出ることができません。さようなら。」
鼻水を啜りながら受話器越しに言われる内容に頭の中が白くなり、次に沸騰する。
「ふざけるな!今どこにいる!!」
「何で私が怒られるの…!?悪いのはあんたじゃない!!」
「いいから教えろ!!」
「…北崎さん?今美奈は私の家に来てます。」
落ち着いたトーンの声の持ち主に変わる。
その後ろでは何でばらすの裏切り者ー!と叫ぶ美奈子の声が聞えてきた。
「レイか?すぐに行く。それまで美奈子を柱にでもなんでも括りつけて待ってろ。」
ブツっと通話終了ボタンを押して火川神社へ走り出す。
さようなら、だと?
そんな言葉はもう聞きたくない。
さようならの本当の意味を前世で何度も味わった。
アルテミスの言葉が頭をよぎる。
『彼女本来の最高の笑顔を見ることが出来るのは賢人だけなんだぞ』
俺だってそうだ。
きっと、本当の自分でいられるのは美奈子の前だけだ。
何度掴みたくて掴めなかったお前という恋人を俺はもう二度と放さない。