My girl…(ジェダレイ)
いつだってその態度は冷たくて、それなのに瞳はまるで炎のように熱く燃えている。
俺の好きになった彼女は今も昔もそんな人。
「何しにいらしたの?」
火川神社の鳥居をくぐれば、鎮守の森のような木々の木漏れ日の中にその人はいた。
漆黒の髪はその光を浴びて艶やかに煌めいていて、巫女の格好をした彼女はその手に竹箒を持っている。長い階段を上っているときに聞こえていた石畳の砂をかく一定のリズムは、俺という存在を確認した時にピタリと止まった。
そして昔と変わらない、一度見れば逸らすことのできない炎に見つめられて俺の心はその熱さに捕らわれてしまうのだった。
「君に会いに。」
「どうして?」
俺はゆっくりと彼女の方へ歩き出してその距離が少しに縮まった頃、その美しい顔に見とれながらも、年相応の少女らしい戸惑いを感じ取っていた。
ああいっそこのまま彼女を抱き締められたら…。
そんな衝動に駆られながらもありのままの真実を紡ぎだす。
「レイさんに、会いたかったから。」
俺の言葉に目を皿の様に大きくした後、彼女の表情はふと緩む。
そしてまるで今までとは違う顔をして笑っていた。そう。無邪気な女の子のように。
「バカみたい。そのまんまじゃない。」
「え…?」
「まあそれが貴方らしいところなのかもしれませんわね。」
彼女の表情の変化にぼうっとしている俺を余所に、一人納得して視線を逸らして優しく微笑んでいた。
柔らかい雰囲気が彼女を包んでいて、そんな新たな一面をよくは分からないが俺の発言で見ることができて否応なしに嬉しさが胸に広がる。
「ずっとレイさんのこと、美しい人だと思ってた。でもこんなに可愛く笑ったりもするんだね。」
再び砂を払い始めていた彼女は静止し、勢いよくこちらに向き直ると心なしかその頬は紅潮していた。
「瑛二さん!」
「え?……何?」
俺の名を叫ぶ強いオーラに圧倒されながらもどうにか答える。
「貴方の目的は果たせたでしょう?だったらもう帰ってくださる?」
「レイさ…」
「帰って。掃除の邪魔ですわ。」
竹箒を動かしながらとうとう目も合わさずに言い放たれてしまった。
近付けたと思えばまたすぐに離れてしまう。
その繰り返し。
だけどこうして色々な彼女を知ることができるから。
「分かった。今日は帰るよ。」
彼女は答えない。代わりに箒を大きな音を立てて動かしている。早く帰ってくれと言うように。
そんな彼女がおかしくて、今度は俺が笑ってしまう。
「でもまた来る。」
そうして俺は呆気にとられているレイさんを残して石階段を降りていった。