意地っ張りな彼女(ジェダレイ)
「それはただ単に照れてるだけよ!」
パーラークラウンで、テーブルの向かいに座る美奈子は自信満々にそう言ってレモンパイを豪快に頬張る。
「照れる…?」
「んもお~瑛二くんたら鈍すぎ!」
大きく腕を振ったかと思えばやれやれと肩を竦めて息を吐くという演技臭い動きをする。
いちいちオーバーアクションで話す美奈子に何も言えずに呆気に取られていた。
相談相手を間違えただろうか…。
思わずそんなことを考えていると、彼女は遠慮無しにビッと俺を指差して真剣な(ような)表情を作る。
「い~い?愛の伝道師美奈子様に言わせれば、彼氏といちゃつくのが嫌な女の子なんているわけないの!
でもレイちゃんの場合、ズバッと聞かれたら素直に答えられないのよ!」
「そう…なのか?」
「そうそう♪絶対そう!」
そして彼女はアイスティーを美味しそうに飲む。
確かに俺は何でも物事を率直に言うタイプだ。レイさんは反対になかなか自分の内を晒せない。
そのことは分かっていたはずなのにこうして美奈子にはっきり言われるまでは本当には理解できていなかったのかもしれない。
そこまで考えていたら不意に背後から声が聞こえた。
「美奈、いい加減なこと言うのやめてくれる?」
「レ…レイちゃん!いつからそこに!?」
顔中にヤバイと書いてある美奈子は逃げ腰になりながら訊ねた。
「今よ今!それとね、私は別に照れてる訳じゃないの!」
え…?そこから聞いていたってことはかなり前からいたんじゃ…。
俺がそんな事を思ってレイさんを見ていると目が合い、睨まれる。
「何?瑛二さん。」
「レイさんもしかして…最初から俺のこと追ってきてた?」
すると再び顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
「だったら…?」
「え?」
「だったら何よ!わ…私はただ、あのまま瑛二さんが一人で変に落ち込んだりしたら面倒だと思って…!!」
彼女の言葉にみるみる自分の表情が晴れやかになっていくのを感じていた。
「レイさん!」
立ち上がって手をギュッと握ると、突然のことにレイさんは驚いて小さく悲鳴を上げる。
「ちょっと!!やめてよ瑛二さん!」
「わ~♪瑛二くんっておっきい犬コロみたいだね!」
美奈子が横からそんなことを言ってくる。
確かに今の俺に犬のように尻尾があればきっとブンブン振っているだろうし、何度突き放されても嬉しそうに寄っていく姿はやっぱり犬に見えるかもしれない。
だけど俺はそんなことを言われようがお構いなしに目の前の恋人のことしかもう見てはいなかった。
「これからデートしよう!レイさんの好きなところどこでもいいから。」
「ヒュ~!デートだデ・エ・ト♪♪」
俺の言葉に美奈子はさらに盛大に冷やかし始める。
「美奈!!あんたはもういい加減にしなさいよ!?」
「あ!ちょっとレイちゃ~ん!」
とうとう我慢ができなくなったレイさんは呼び止める美奈子を一度も見ることなく、俺の手をグイと引っ張って店の外へと連れ出した。