ひざまくら(ネフまこ)

まことはもっと俺に甘えればいいのに。

あいつは強い女だ。それはもちろん、力がってことじゃない。心、いや、芯が強い。うさぎちゃんたちが頼りにしてる姉貴分。実際俺もまことのそんな懐の大きい包容力のある優しい部分も好きだ。

けれども、花に水をやってる時の微笑みとか、野菜を刻んでる時の鼻歌。抱き締めると静かになって背中に添えられる手。
そういう柔らかな、女らしい部分も好きなんだ。

怒った顔も、可愛い顔も全部丸ごと包んで甘やかしたい。

それが俺の幸せなんだと思うから。



「お帰り~!お邪魔してるぜー。」

「晃来てたのか!」

帰ってきた恋人がリビングに現れ、俺は笑顔でその帰宅を歓迎し手をひらひら振れば、ただいまといらっしゃいの言葉も忘れずに彼女はパタパタとスリッパを鳴らして慌ててカウンターキッチンに入る。

「来るなら連絡くらいくれればお前の好きな料理考えて食材買ってきたのに。」

そう言いながらも早速手を洗ってエプロンを締めるまことに苦笑する。

「まこと」

「肉じゃがにしようかと思ってたけど、材料そんなに変わらないしコロッケにしようか?かぼちゃもあるから二種類できるし。晃は煮物よりは揚げ物派だろ?」

「まあそりゃそうだけど。まこと」

「すぐ下ごしらえするから待ってな。」

もうじゃがいもの皮を剥き始めるものだからいよいよ参った。

俺はそのまま彼女に近付いて背後に回る。

「まこと、料理はまだいいから。ちょっとこっち向いてくれねえか?」

「え?何?」

突然後ろから言われて驚いた彼女は包丁を置いて手を拭き振り向いた。そんなまことを横抱きにするとソファーに向かい歩き出す。

「ちょっと!なんだよ!」

「まあまあ。」

「晃腹減ってんだろ?夕飯作らせろって!」

「まあまあまあまあ。」

「わあっ」

ソファーに横抱きのまま腰を掛けるとまことの体を寝かせて膝枕をしてやった。

真っ赤になるまことはその状況に目を白黒させて俺を見上げていた。

「俺のことばっかじゃなくて少しは自分のことも労わってくれよ。」

前髪を撫でながらそう言って額に口付ける。まことはますます赤くなるけれど、ちょっと感動したような顔をしてきゅっと俺の右腕の袖を掴んだ。


ほらな

可愛い



微笑む恋人の幸せな重みを感じて、俺はもう一度身を屈めた。




おわり
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