君は花に囲まれて微笑む(ネフジュピ)



「よおクンツァイト。相変わらず眉間に皺が寄ってんぞ!さーては今日も月からのお姫様が来てんのか?」

背後からガシリと腕を回して首周りをホールドし、奴の小難しい横顔を見てからそう言った。

「やめろネフライト。ああ。いらっしゃっている。全くヴィーナスも何をやっているのだか。今度こそこちらにいらっしゃる前に止めると言っていたのに。」

溜め息混じりにそう言う苦労性の我らがリーダーの視線の先を見れば、庭園のバラを仲睦まじく楽しんでいる二人の姿があった。

「今日のお姫様の護衛は?」

「マーズだ。」

「へえ。」

「なぜだ?」

「いや別に。じゃあ頑張れよクンツァイト!」

リーダーの肩をバシっと叩いてその場を去る。




最近ジュピターは地球に来ない。

別に彼女が来ないからといってどうということも無いのだが、この前独自で開発した植物栄養剤をついでに見せてやろうと思っていたから、何やら肩透かしを食らう日々だった。

「ま、来ない方が普通だよな。」

ポツリと一人呟いて自分の研究室に戻っていく。

心のどこかに空いたような気がする隙間も、研究に集中すればすぐに塞がるだろうと安易に考えていた。






しかしその後1ヵ月経っても彼女は地球に現れなかった。




「マーキュリー、だったよな。ちょっといいか?」

さすがに何かあったのではと思った俺は、その日護衛に来ていた水星の守護者に初めて話しかける。

「はい…?」

突然呼ばれて不思議そうな顔をする彼女に、すぐに本題を切り出した。



「ジュピターですか?ここのところ毎日ドームの庭園で朝から晩まで何かの研究をしているみたいなんです。私も手伝おうと声を掛けるんですけど、どうしても自分一人でやりたいからって…。彼女が、何か…?」

「いやあ最近来ないから腹でも壊したんじゃねーかと思ってさ!」

冗談めかしてそう言うが、彼女は至って真面目な表情で切り返した。

「それは無いです。彼女は私たちの中で一番健康体です。」

「はは!それもそうだ!悪かったな護衛中に呼び止めて。マスターとプリンセスは泉のほうに移動したみたいだぜ。」

俺のその言葉に挨拶もそこそこに慌てて彼女は二人の後を追っていった。





なんだよジュピターの奴。一人で頑張りやがって。

植物に関しては頑なになってしまう気持ちも分かるが、一人で悩むよりこの俺に話して二人で考えたほうが効率がいいに決まってるだろ。


俺は無性にイライラする気持ちを抑えられず、気が付けば月に繋がるゲートまで来ていた。



こうなったらあの強情女に説教してやらなきゃ気が済まねえ。

今は掟なんて考えてられるか。




いきり立ったまま光り輝くゲートに大股で足を踏み入れていった。



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