kizuna
「パパ、ママ!起きて~!!」
ボフンと両親の眠るベッドにダイブして大きな声で呼びかける。
「…スモール・レディ…?」
主に娘に全体重を乗せられているキングは先に目を覚まし重たい眼を擦りながら欠伸混じりにそう言った。
「今日はお出かけなんだよね!?早く行こうよ~!!」
まだ髪を結っていないため、寝癖が芸術的に跳ねているスモール・レディ。父親が目を覚ましたのを嬉しそうに見つめていた。
「うう…ん…。もう朝なの…?」
さすがに騒がしい娘の声に気付いたクイーンは瞳を開けずに眠そうに言った。やはり朝にはどうしても弱いらしい。
「朝だよ!朝、朝、朝~~!!」
「う…五時…半…。」
思わず枕元の時計を見たキングは眉をひそませる。
「え、五時半…?スモール・レディ、まだ早いわ…もう少し寝てなさい。」
キングの告げる時刻に思わず目を開いて呆れるクイーンは娘に出来るだけ優しく語り掛ける。
「やだ!今日はお出かけするんだもん!もうお支度しちゃったんだよ!?」
確かに今日は親子三人で久しぶりに遠出をする予定だった。以前にも行ったのだが、まだその頃はスモール・レディはほとんど赤ん坊だったため覚えていない。だから、この小さな少女にとって、両親と出掛ける初めての小旅行だったのだ。
スモール・レディが楽しみにするのも無理もない。
分かっているからこそ、キングとクイーンは騒々しく起こしてくる娘を邪険にすることもできず、何だかんだと押し問答した後、最終的には降伏して重い体を起こしたのだった。
「ママー!髪の毛やって!」
「はいはい。」
着替えた両親を待ち構えていたプリンセスは母親に催促すると、腰掛ける彼女の膝の上にぴょこんと乗った。
まだ肩までしかない髪の毛はお団子も小さくしか結えないが、それがプリンセスの幼さを表しているようで、可愛らしかった。
「ほら、ボタン掛け違えてるぞ?」
キングが優しくそう言って、娘の服を整えていく。
出来上がったその姿を大きな鏡で確認すると、プリンセスは嬉しそうにクルクル回ってニコッと笑った。
「失礼いたします。」
ノックの後、三人の部屋に入ってきたのはマーキュリーだった。
「あら、今朝は三人ともお早いんですね。まだ六時ですよ?」
キングはともかく…と思ったのか、残る二人を不思議そうに見つめるマーキュリー。
「スモール・レディが張り切っちゃって…」
苦笑しながら答えるクイーンに「ああ、なるほど」と納得したように呟く。
「スモールレディ、良かったですね。今日は楽しんできてくださいね。」
「うん!おみやげもいっぱい買ってくるよ!」
「それは楽しみ。キングもクイーンも少し骨を休めて来てください。」
その言葉に二人は「ありがとう」と返したが、内心は果たしてこのお転婆盛りの娘を連れてそれが叶うのかと思うのであった。
そしてマーキュリーは事務的事項を簡潔にキングに伝える。
その内容はプリンセスにはよくは分からなかったが、クイーンの面差しはやや曇っていった。
「こんな朝早くにすみませんでした。この件だけはどうしても早くお伝えしたかったので。それにせっかくの休暇なのに…」
「気にしないでくれ。報告ありがとう。」
そして一礼すると水星の守護者は去っていった。