good night darling




「たまにはこういう寝方もいいな。」

「ええ。私たち、三人で家族ですものね。」



夫婦の寝室で交わされる会話。二人の間には安心して眠りについている娘の姿があった。

結局あのあと娘は両親と一緒にいたいとせがみ、二人はこの部屋にわが子を連れてきたのであった。

「まだまだこの子は甘えん坊さんね。」

スモールレディの頭を撫でながらクイーンは微笑む。

「そうだな。でも…母親に似たらこの先もずっと甘えん坊だな。」

くすくす笑ってそう言うキングにちょっとだけ意地悪な表情をしたクイーンが口を開いた。

「あら。その時は、あなたみたいに素敵な彼氏を見つけて甘えればいいんだわ。」

「…な!?」

普段ではあまり見せることの無い焦ったような余裕の無い顔を浮かべるキングにクイーンは声を上げて笑った。

「…そんなに笑うこともないだろう。」

「だってっ…エンディミオンの今の顔、慌てた時のパパにそっくり!!」

そう言われてますます顔を赤くしていく彼は、きっと女親には一生分からないんだと心の中で反論していた。

娘が誰かの彼女になるとか…嫁ぐとか。考えただけでも気分が悪い。

自分はこんなに親バカになる予定ではなかったというのに、実際娘が出来たらこんなことを思ってしまうのだから、娘を持った世の父親は皆きっとそうなのだと納得し自分を無理にでも正当化する。

そうだ俺は別に親バカなどではない。絶対に。

キングは必死に自分に言い聞かせた。



「…もう寝る。」

がばっと毛布を引いてキングは妻に背を向ける。

「ふふっ!おやすみなさい♪」

余裕な妻の様子に少しだけ腹も立ったが、今更ながら、彼女の父親に申し訳ない気持ちになる。娘を持って初めて理解したこの思いを彼は何倍も感じていたに違いないから。

「今度君のご両親をパレスにお招きしよう。」

「え?どうしたの急に。」

誕生日や年末年始以外はほとんど会わなかった彼女の両親を招待するというキングの申し出にクイーンはそれこそ鳩が豆鉄砲を食らったような表情で驚いていた。

「なんだかお義父さんと飲みたくなったんだ。」

「パパと?…あ!分かったわ!さては…」

言いかけたクイーンをさえぎるようにおやすみとだけ言うと、キングは目を閉じた。

クイーンは、自分の夫もキングである前に、やはり娘を持つ父親なのだと思った。だから突然の彼の提案の真意もすぐに分かり、同時に自分の父親を頼ってくれていることも分かって嬉しくなったのだった。


「ねえまもちゃん。」


懐かしい呼び名にキングは振り向く。

すると母親であり、妻であり、永遠の恋人である女性がとても美しく微笑んでいた。


「私、今…とっても幸せよ。」


愛する人の存在や、日常の中で、こうした些細な幸せを感じることができるから、どんなに大変な責務や役割があっても生きていけるのだと…クイーンは思った。

それが家族という大切な繋がりなのだと――――



クイーンの言葉にキングも確かに幸せを感じつつも、彼氏という言葉に未だ憤慨していた彼は「俺は不幸だ!」と半ば冗談ぽく喚いてみせた。

それを見たクイーンは再びコロコロ笑う。

最後には笑顔になったキングは、娘には額に。妻には唇におやすみのキスを落とした。





クリスタルパレスの一つの家庭の長い夜は温かく優しく明けていく――――――










おわり
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