good night darling

「それに君は一人じゃないだろ?いつも俺が側にいる。」

「そうね。あなたが私の隣にいてくれる…。」

顔を上げて微笑むセレニティは彼女に宿る聖石と同じように強く美しく輝いていた。

キングの手がクイーンの頬を包み込み、唇が重なり合おうとしたその時だった。

娘の大きな泣き声が隣の寝室から聞こえてきたのは。

二人はどちらからともなく苦笑し、ベッドから起き上がった。


「あなたは良いわよ。もう眠って?明日は私より早いんだから。」

共にベッドから出ていこうとする夫を柔らかく制したが、キングは首を振る。

「俺たち二人の娘だろ?一緒に行くよ。」

穏やかに、でもきっぱりとそう言う彼に、クイーンは微笑んで頷いた。








「どうしたの?スモールレディ。」

ベッドの上で座り込んで大声で泣く我が子に近付きながらクイーンは尋ねる。

「ママぁ~!怖いお化けがくるよ~っ」

しゃくりあげながらそう言うスモールレディ。母親に抱き付いていくらか収まったようだが、それでもエンエンと泣いている。

クイーンはあらあらと言いながら背中をさすって抱き締めてやる。

「怖い夢を見たんだな。スモールレディ。大丈夫だ。パパとママもいるぞ?」

キングは娘の頭を優しく撫でる。

「そうよ。それに…」

クイーンが語り掛けるのをスモールレディは泣きながらも顔を上げて見つめる。

「怖くなったら、夢の中でセーラームーンが助けてくれるわ。」

「セーラー…ムーンが?」

ひっくひっくとまだ呼吸が落ち着かないスモールレディだったが、その言葉で泣くのをピタリとやめた。

「あと、タキシード仮面もね♪」

クイーンはウインクしながらそう言った。

「タキシード仮面!?だれだれ!?そのひとも強いの!?」

すっかり泣き顔が消え去った娘は初めて聞くその名前に好奇心と期待を胸にいっぱい膨らませてクイーンに尋ねた。

「ええ。強いわ!タキシード仮面は、セーラームーンがピンチの時に、いつも必ず助けてくれるの。」

「すごーい!!ねえ、その人かっこいい!?」

「もちろん。セーラームーンが恋しちゃうくらいかっこいいわよ。」

母子の微笑ましいやりとりに、自分の過去が引き合いに出されていてどことなく落ち着かないキングは、コホンと咳払いをする。


「さあ、もう怖くないだろ?安心しておやすみ。」

「ええ~!?もっと聞きたい~!!」

父親の言葉に膨れっ面で反論するスモールレディに、母親は耳元に顔を近付ける。

「パパは照れてるのよ。自分の昔のことを言われて♪」

「ええ!?タキシード仮面ってパパのことなの!?」

クイーンの小声の何倍ものボリュームでそう言うスモールレディにキングは少しだけ顔を赤くした。

「続きは、パパがいないときにしてあげるわ。」

「はーい♪♪」

妻と娘が笑顔で約束している背後でキングはなんとも言えない表情で二人を見つめている。

「頼むから勘弁してくれ。」

はあ…と溜息を付きながらそう言う様は、昔の彼と何の変わりも無かった。




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