good night darling
「あの子に君がセーラームーンだった時のことを話したよ。」
キングは最愛の娘を寝かしつけたあと、妻のいる夫婦の寝具に腰を下ろしてそう言った。
「そう…。スモールレディはなんて言ってた?」
懐かしそうに過去の自分に思いを馳せながらクイーンは聞き返す。
「目をキラキラさせて、まるでおとぎ話のヒロインの事を聞くようにして…セーラームーンに会ってみたいと言っていたよ。」
微笑んでクイーンを見つめるキングは自分のことのように嬉しそうにしていた。
「会ったら…きっと幻滅ね。あの頃の私は、ドジで泣き虫でお馬鹿さんでおっちょこちょいで…ああもう!自分で言うのも嫌になってくるわ。」
ぷうと僅かに頬を膨らませてわざとらしくげんなりしてみせる妻にキングは吹き出す。
「今もそんなに変わらないだろ?公以外の君は。」
「ええどうせ、三つ子の魂千までよっ!」
「難しい言葉を使うじゃないか。まあ正確には百までもだけど。」
心底珍しげに目を見開いて言うキングにセレニティはいいの!寿命が延びたんだから!と反論する。
彼は確かにな、と楽しげに笑う。
クリスタルトーキョーが建国され、彼等がキングとクイーンに即位して五年。愛する娘が産まれて三年が経とうとしていた。
ようやく娘の育児も一段落し、その間にも絶えずあった公務も今日は二人とも片付いている。
それはとても久しぶりのゆっくりとした夫婦の時間ができたということを示していて、二人は夜がとっぷりと更けるまで水入らずで語らっていた。
「ねえエンディミオン。」
「何?」
さすがに眠くなって瞼が閉じそうになっていたキングだったが、いつになく真面目な調子で聞いてくるセレニティに顔を上げる。
「本当に私で良かったのかしら…。」
「え…?」
「ドジで泣き虫な私がこの星の女王になって…本当に良かったのかな。」
不安な色を宿してそう聞いてくる彼女は、キングが昔から知っている少女時代そのままの面影を映していた。
信じて
くじけて
悩んで
それでも信じ続けたあの頃の彼女のままに。
キングは何年も前から何度も包み込んだ彼女の体を今一度きつく抱きしめた。
「君は誰よりも強いよ。だって、自分の中の弱さや痛みや苦しさを認めて…受け入れて。それを大切な人々への愛情に変えることが出来るんだから。」
「エンディミオン…。」
夫の言葉を聞いて自然と温かな涙が頬を伝い、彼の胸元に溶けていった。
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