王子様は誰のモノ??
「ねえ!もうやめましょう!?こんなことで戦うの!!」
私は月野うさぎ。16歳高2。数々の戦いを経て、今度こそ平和を取り戻して平凡に楽しく女子高校生をやっている…はずだった。
「衛の好物はビターチョコだ!!」
ドッカーン!!
人間として転生したはずの賢人さん(クンツァイト)はそう言いながら私に目掛けて超人的な力を放ってくる。
「違う!ミルクチョコだもん!!」
もう変身することも無いと思っていたセーラー戦士のコスチュームを纏った私は髪飾りを投げ付ける(流石に必殺技を出すわけにはいかない)。
チリ…ッ
賢人さんの頬を掠めてうっすらと血が滲む。
「ほう…あくまでも言い張るつもりかセーラームーン。」
ここは誰も出入りすることもない廃工場。話があると言われて付いてきてみれば、四人に囲まれてどういう訳か大ピンチ。
彼等が言うことには、ここで誰がどれほどまもちゃんの事を大事に思い、彼についてどれだけ知っているのかをはっきりさせたいらしかった。
でもそれは、ただ話し合えばいいもののなぜかこうして戦闘を強いられている。
あまりにも衛、衛って四人が言うからつい私もかっとなって…
「あなたたちねー、そんなにまもちゃんのことが好きでも男なんだからね!どんなに頑張っても結婚はできないんだから!!」
その言葉を言ったが最後。彼等の逆鱗に触れてしまったのか、急にバトルに発展してしまったのだった。
「バレンタインでミルクチョコ溶かしてトリュフ作ったら美味しいって言ってくれたんだから!!」
賢人さんの攻撃をかわしながら反論する。
「衛がいつも一人の時にコンビニエンスストアで買うチョコはビターだと決まっている!!…知らなかったのか?」
ニヤリ
頬の血を拭いながら私を見下して賢人さんは微笑した。
「そうだとしても!!美味しいって言ってくれたのは愛があるからだもん!」
キッと睨んで瞳を少し濡らしながら言い放つ。
「…な…っ!?」
賢人さんはよろりと後退り、後ろにいた瑛二さん(ジェダイト)にぶつかる。
「しっかりしろ賢人。」
そう言う瑛二さんはゆっくりと私ににじり寄ってきて腕を組む。
「これは知っているか?衛は週に四回は近くの電気量販店でマッサージチェアに座っている。」
パアーン!!
勝ち誇った顔でそう言いながら緩やかに攻撃を放つ。
「まさか!?」
衝撃的な内容に避けるのが遅くなり、なんとかギリギリでかわす。
「そんな疲れた体を癒しているときの衛の顔…見たことが一度でもあるかな?」
「い…いいんだもん!!レポートで疲れてる時、私がギュって抱き締めたらすっごく嬉しそうに笑ってくれるんだから!!」
久し振りのセーラームーンキックを手加減抜きでお見舞いすると、予想以上にヒットしてしまって慌てる。
「う…そ…だ…。抱き締めるなどと…っ!!」
そう言って静かに倒れる。
「うわわっ!瑛二さん!?大丈夫ですか!?」
私が瑛二さんのそばにしゃがみこむと、頭上に影ができる。
「あらあなた。人のこと心配している場合?」